序章:静まり返った牧場に、ありえない事件
リーグ戦が終わり、ワイルドカード枠は Grimcats が首位通過。
その背後で Fresh Hellions と Mighty Cattle が3勝3敗で並ぶという“二強の影”が生まれた。

2位:Fresh Hellions(3勝3敗 / RD -2/総得点 29)
3位:Mighty Cattle(3勝3敗 / RD -2 / 総得点 28)
直接対決成績は 1勝1敗。
得失点差も同じ。
しかし――わずか総得点1点差で明暗が分かれた
結果的にFresh Hellions が辛くも2位を確定させた。
そしてMighty Cattle は僅差で3位に沈み、プレーオフ出場権を失った。
北のブルーホーン地区に戻った彼らは、
失意を抱えつつも来季へ向けての準備を始めていた。
そんなある朝、
チームフロントを震え上がらせる知らせが飛び込んだ。
「Kamden Klein(カムデン)が行方不明だ。」

Mighty Cattle の先発投手陣のひとり。
リーグ戦こそ不本意な成績だったが、
チーム内では“伸びしろが一番ある男”と目されていた。
彼の失踪は、ただの私的トラブルではなかった。
不自然な点が多すぎた。
消えたのは夜明け前、最後の目撃は「北の林道」
カムデンが姿を消したのは夜明け前。
牧場近くのトレーラーハウスはもぬけの殻。
隣人が最後に見たのは──
「北の林道を、一人で歩いていく後ろ姿」
その道は、普通なら歩かない。
牛の移送ルートを外れた荒れた山道で、
深い霧の“ミストフォール地区”へと続いている。

そう──
Grimcats の本拠地がある、あの地区だ。
リーグ首位の彼らは、今や街の英雄。
しかし同時に、霧に包まれた彼らには
外部の者には見えない“闇”があるという噂も絶えなかった。
北部捜索隊が見つけた“奇妙な痕跡”

翌日、地区警備隊と Mighty Cattle のスタッフが
林道を捜索した。
発見されたのは、三つ。
- 足跡が途中で消えていること
霧が濃くなる地点を境に、足跡は唐突に途切れていた。 - 道脇の枝に、紫色の布片がひっかかっていたこと
Mighty Cattle のカラーは青と金。紫ではない。 - 動物のものではない“奇妙なひっかき傷”が木に残っていたこと
警備隊は首をかしげながら言った。
「まるで…誰かが“連れて行った”みたいだ。」
Grimcats への疑念──しかし彼らも驚いていた
その日の午後、
Mighty Cattle のフロントはすぐに
Grimcats の本拠地・ミストフォール球場に連絡を入れた。
返ってきたのは、沈んだ声だった。
「俺たちも初めて聞いた。何があった?」
Grimcats のキャプテンは、
記者会見でこう語った。
「カムデンがうちの地区に来る理由なんてない。
捜索には協力する。…ただし一つだけ言わせてくれ。
あの林道は“何か”がおかしい。
今の俺たちでも、夜は通らない。」
彼らの表情は真剣だった。
疑っていた Mighty Cattle サイドも、
その顔を見て沈黙した。
──犯人は Grimcats ではない。
誰も口にはしなかったが、
全員が同じ“別の可能性”を思い描いていた。
Nemesis の影──「紫の布片」が指し示すもの

林道で発見された紫の布片。
その色は、どのチームのユニフォームとも一致しない。
ただひとつだけ、
思い当たるチームがあった。
つい最近、
謎めいたロゴと共に SNS で噂になり始めた
“Nemesis”
という名の新興チーム。
まだ正式加盟前だが、
街の一部で“Grimcats と因縁がある”と囁かれていた。
紫色をチームカラーにした、謎の団体。
その存在が、今回の事件と奇妙に重なる。
そして街は知る──“これは始まりにすぎない”
市庁舎の会議室で、四地区の代表が揃った。
テーブルの中央に置かれたのは、
・カムデンの帽子
・紫色の布片
・林道での写真
沈黙のあと、誰かが呟いた。
「プレーオフどころじゃないぞ…」
しかし、
霧の街ミストフォールに長年住む Grimcats のキャプテンは違った。
「いや──これは、始まりだ。」
「Nemesis が何者か、ついに姿を見せる。」
そしてその視線は、不思議なほど冷静に凍っていた。
エピローグ:カムデン・クラインの“運命”
最後に彼が目撃されたのは、
霧の深い林道の中。
足跡が途切れた先には、
何か大きなものを引きずったような痕跡があった。
その先の森では──
紫色の羽根片のような布が、静かに揺れていた。
カムデンはまだ見つかっていない。
意識があるのか、無事なのか、
生きているのかすら分からない。
ただ、霧の奥から聞こえる“何かの気配”だけが
街の不安を増幅させていた。
■次回予告:第6話へ
プレーオフ進出は Grimcats と Fresh Hellion。
しかし、その舞台裏で Nemesis の影が動き出す。
そして――北の霧の奥で、カムデンがついに“何か”を見てしまう。

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