フロンティア・クロニクル【第3話】静寂の停電、動き出す疑念

目次

1.開幕の鐘──4チーム、ついに動き出す

調印式から一夜明け、
フロンティア・タウンはまだ眠たげな空気の中にあったが、
野球場だけは別世界のように熱気を帯びていた。

ついに――
フロンティア・リーグ初年度、開幕。

リーグのルールは明快で、そして残酷だ。

  • 4チーム総当たり・ホーム&アウェイの6試合
  • 上位2チームが優勝決定プレーオフ(3戦制)へ
  • 優勝チームはFAから1名獲得可能
  • 最下位チームは、首位チームから“入れ替えトレード”を強制される
  • さらにフリーエージェント協会からも強制トレード通告の可能性あり

小さな街がつくったリーグにしては苛烈すぎるルールだ。
だが、この「苛烈さ」が、選手たちの血を昂らせていた。

2.第1〜3戦:混戦スタート、南北が一歩リード

3戦を終えた時点で、順位表はこうなった。

1位:Fresh Hellions(南) 2勝1敗/RD +4
1位:Mighty Cattle(北) 2勝1敗/RD +4
3位:Grim Cats(西) 1勝2敗/RD -4
3位:Justice(東) 1勝2敗/RD -4

南と北が並走し、東西が一歩遅れる形となった。

特に目立ったのが――

🔥 Deino Munster(Fresh Hellions)

  • HR:4本でリーグ断トツ1位
  • 打点:5でトップタイ

“ヘリオンの心臓”と呼ばれる若きスラッガー。
アッシュクレストの赤いネオンに照らされながら振り下ろす一撃は、
まるで暴発寸前の火薬庫そのものだった。

そして、霧の西から現れた静かなる怪物――

Zechariah Downhill(Grim Cats)

  • 打率:.727 でリーグトップ

無表情のまま淡々とヒットを量産するその姿は、
「霧が形を持ったらこうなる」と評されるほど存在感が奇妙だった。

しかし、チームは1勝2敗。
静かに笑っているのか、怒っているのかさえ分からないその表情の奥は、
誰にも読めないままだった。

Deino Munster(左)Zechariah Downhill(右)

第3戦終了時のランキング

打点

ホームラン

打率

3.第3戦終了直後──最初の異変が起こる

事件は、
第3戦の全試合が終わったその夜に起きた。

選手たちが球場を後にし、
街の灯りが落ち始めた頃。

フロンティア・リーグ事務局に、
突然、一本の連絡が入った。

「ミストフォール地区の電力網が大規模障害──停電が長期化する可能性あり」

西の“霧の王国”であるミストフォール地区が、
謎の送電トラブルに見舞われたのだ。

夜の深い霧の中、山間に広がる黒い闇。
信号は消え、住民のスマートフォンは軒並み「圏外」。
球場も当然、真っ暗だった。

しかし、この停電には――
不可解な点があった。

  • 停電が起きたのは、Grim Cats の本拠地周辺だけ
  • 原因がどこを探しても見つからない
  • 前兆や機器の異常記録もゼロ

その夜、消防局は公式にこう発表する。

「自然災害の形跡はありません。
 ただし、人的な影響があった可能性は否定できません」

街中にざわめきが走った。

“人的な影響”――つまり 何者かの介入 だ。

4.疑惑の矛先は、またしても“南”へ?

停電の報を聞き、
最初に市庁舎へ駆け付けたのは Justice の署長だった。

「停電区域があまりにも限定的すぎる。
 これは“誰か”がグリムキャッツを狙って仕掛けた可能性がある」

彼の眼差しは鋭く、
まるで犯人がすでに頭の中に存在するかのようだった。

そして、市庁舎に呼び出されたのが――

Fresh Hellions の代表と数名の選手。

火災の一件以来、
東(Justice)と南(Hellions)の緊張は完全に癒えていなかった。

署長は静かに言う。

「あの地区(アッシュクレスト)には送電網に詳しい若者が多い。
 今回の障害に関与していないか、念のため確認させてもらいたい」

Hellions のキャプテン、Deino Munster は
普段のふざけた態度を捨て、真顔で言い返す。

「霧の中で電線いじるほど暇じゃねえよ。
 俺たちは、今日もホームラン打つだけだ」

だが――
事務局の空気は完全に凍りついていた。

南は疑われ、
西は沈黙し、
東は警戒し、
北はただ重い空気を見守るだけ。

5.リーグ初の“危機”が訪れる

停電の影響で、
Grim Cats の次ホームゲームは開催不可能
という判断が下された。

全員がショックを受けた。

まだ3戦しかしていない初年度リーグで、
史上初の「試合延期」発生。

そして、事務局はこう宣言する。

「第4戦の開催可否は、明朝決定とする」

この発表を受けて、
街の噂は最高潮に達する。

  • 「Hellions の仕業だ」
  • 「Grim Cats の自作自演らしい」
  • 「停電に乗じて誰かが施設に侵入したらしい」
  • 「Justice が調査で何か掴んだらしい」

証拠もない噂が、
霧のように街を覆っていく。

6.そして夜が明ける──第4戦の運命は?

ミストフォールの霧が晴れるのは、いつも朝のほんの僅かな時間だけ。
その短い晴れ間を狙って、技術チームの調査が入ることになった。

フロンティア・リーグは発足したばかり。
一つの混乱で崩れてしまってもおかしくない、
危うい均衡の上に成り立っている。

第4戦が行われるのか、行われないのか。

西の霧はまだ晴れない。

だが、一つだけ確かなことがある。

この停電事件が、リーグの“初めての大きなうねり”であることだ。

次回、
停電の真相に迫る「第4話」へ。

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