フロンティア・タウンの中央に位置する、市庁舎の大会議室。
そこでは翌朝、四つの地区が正式にリーグ結成へと調印を交わす予定だった。
しかしその前夜、街の空気は妙にざわついていた。
東と南──Justice と Fresh Hellion が、ついに正面衝突してしまったのだ。
■ 発端:アッシュクレストの“壁”
事件は南のアッシュクレスト地区の、とある廃工場跡で起きた。
Justice の若い消防士出身の選手が、
「調印式前の街の安全パトロール」
の一環として地区巡回をしていた。
その彼が、工場の裏に描かれた巨大なグラフィティを見て眉をひそめた。
悪魔の角が生えた野球選手が、バットをへし折っている。
下にはスプレーで荒々しく描かれた文字。
“Burn the Order.”(秩序を焼き払え)
その目の前に、Fresh Hellion の選手たちがいた。
最も気性の荒い若者が言い放つ。
「気に入らねぇか? これが俺らの“挨拶”だよ。」
Justice の選手は冷静さを保とうとしたが、口が勝手に動いた。
「これは単なる落書きじゃない。反社会的な侮辱行為だ。」
次の瞬間、空気が変わった。
煽られた若者が一歩踏み出した。
「侮辱? 正義ヅラしたあんたらこそ嘘くせぇんだよ。」
■ 衝突:拳が飛ぶ前の“ギリギリ”
工場裏で緊張は限界まで張り詰めていた。
Fresh Hellion の選手たちがじりじりと距離を詰め、
Justice の選手は後退することなく、その場に立ち続ける。
そのときだ。
大通り側から、署長とHellionのアーティストが同時に駆け込んだ。

署長は怒号を飛ばした。
「拳を上げた瞬間、リーグは終わりだぞ!」
アーティストはヘリオン側に怒鳴り返す。
「てめぇら、調印式の前日に何してやがるッ!」
もう少し遅ければ、本当に殴り合いになっていた。
■ 余波:調印式が“開催中止”の危機に
市庁舎に緊急連絡が走った。
議長は困惑しながら言った。
「こんな状態で調印式などできない。
公的なリーグに暴力沙汰の疑いがかかったら……」
四地区の代表が次々に集まり、空気は最悪だった。
- Justice「秩序を乱す者と同じテーブルには座れない」
- Fresh Hellion「堅物の説教を食らうためにリーグに入るんじゃねぇ」
話し合いは平行線。
テーブルの上には、まだ署名のない調印書。
その紙は、まるで“リーグの命そのもの”のように沈黙していた。
■ 転機:救急無線が鳴る
議論が平行線を迎えたそのとき、市庁舎の無線が突然鳴り響いた。
「アッシュクレスト地区で火災発生!
負傷者の避難に協力要請!」
場の空気が一瞬で変わった。
Justice の消防士出身の選手たちは、椅子を蹴って立ち上がった。
Fresh Hellion のキャプテンは、歯を食いしばって言った。
「……行くぞ。こんな時に揉めてる場合じゃねぇ。」
二つの“最悪の相性のチーム”が、
同じ方向へ走りだした。
炎が赤く街を照らす中、互いに怒鳴り合いながらも救助活動を行う。

瓦礫を運ぶ腕がぶつかり、
指示が食い違っても、
誰ひとり引かなかった。
――少なくとも、“市民を守る”という点では。
■ 調印式の朝

火災は未明に鎮火した。
朝の市庁舎前に、疲れ切った二つのチームが並び立った。
議長が静かに問いかける。
「……まだ続けるつもりは、ありますか?」
Justice のキャプテンは、胸を張って答えた。
「秩序は、守るためにこそある。」
Fresh Hellion のリーダーは肩をすくめ、笑って言った。
「ま、続けてやってもいいぜ。面白くなってきたからな。」
その瞬間、議長は深く頷いた。
「それでは……フロンティア・リーグの創設を宣言します。」
拍手は起きなかった。
起きる体力が残っていなかった。
ただ、四つの地区の目が同じ先を見ていた。
■ この出来事の“意味”
秩序のJustice
反逆のFresh Hellion
この二つの対立は、リーグ成立前から街にとって大きな試練となった。
しかし火災を通して生まれた
“敵同士の最低限の信頼”は、
これから続く長い物語の
揺れ動く関係性の根っこ
となる。
これが、フロンティア・リーグの本当の第一歩だった。


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