フロンティア・クロニクル【第6話】夜を裂く二つの衝撃──消えたエースと勝負の行方

朝のブルーホーン地区は、重たい霧に沈んでいた。
Kamden Klein(カムデン・クライン)の失踪が確認されてから、すでに三日。野営地には捜索班の足跡だけが増え、彼の姿はどこにもない。グリムキャッツ本拠地へ続く“北の林道”こそが最後の目撃地点──その情報がチームにも街にも、暗い影を落としていた。

だが、プレーオフは待ってはくれない。
首位通過の Grimcats は、今日から Fresh Hellions と対決する第1戦を迎えていた。


目次

◆ 1 霧の林道に残された断片

捜索班は、林道入口近くでひとつの“異物”を見つけた。
枝に引っかかっていたのは、紫色の布切れ。
それは羽根のように細長く裂け、あの防犯カメラに映った“紫の影”と形状が酷似していた。

「やっぱり……何かいるんだ」
調査班のひとりがつぶやく。

紫の布は、Kamden のユニフォームとはまるで違う。
どのチームにも存在しない色。
ただひとつ、Nemesis のロゴに使われていた“濃紫”だけが、頭に引っかかった。

Nemesis──
公式には存在しない、だが確実にこちらを見ている“第五の勢力”。

その気配は、確実に濃くなっていた。


◆ 2 プレーオフ第1戦:地鳴りの3ラン

一方その頃、スタジアムでは第1戦の火蓋が切られようとしていた。

先制したのは、アウェイの Fresh Hellions
1回表、二死一二塁で打席に立ったのは、リーグ屈指の長距離砲 Kahua Real

振り抜いた瞬間、球場全体が静止したようだった。
高々と舞い上がった打球は、青空を切り裂き、センター最深部へ一直線。
スタンドに突き刺さった瞬間、Fresh Hellions のベンチが沸騰した。

3ランホームラン。

だが、Kahua の勢いはそこで止まらない。
3回表、再び二死一二塁の場面。
全く同じように、フルスイングの軌道が描かれた。

二打席連続3ラン。

スコアボードには、無慈悲な「6 – 0」の数字。
Grimcats は序盤から完全に追い詰められた。


◆ 3 “北の影”の存在、そして不吉な連絡

試合が中盤に差し掛かる頃、ブルーホーン地区の捜索指揮所に一本の連絡が入った。

『林道奥で……足跡を発見。Kamden の可能性あり』

ただし、その足跡の先には不可解な特徴があった。
足跡が、途中で突然途切れている。

踏み固められた土の上にくっきり残った靴跡が、ある地点でぷつりと消える。
まるで地面から“消えた”かのように。

捜索班は息を飲んだ。

Kamden は、歩いていた。
しかし、辿り着いた先に待っていたのは──
人ではない“何か”。


◆ 4 試合終盤:最後の抵抗

淡々とスコアボードにゼロが並ぶ Grimcats。
しかし、9回裏になってようやく意地を見せた。

二死一二塁。
打席には Bente Macdonald。
フルカウントから、意地のタイムリーヒットで2点を返す。

だが、時すでに遅し。

6 – 2。
Fresh Hellions が第1戦を制した。

Kahua Real が打った2本の3ランが、すべてを決めた。


◆ 5 夜を裂く報告:Kamden の“運命”

試合後、監督室のドアが激しく叩かれた。

「見つかりました……!Kamden と思われる痕跡が!」

だが、それは希望ではなかった。

林道奥の崖付近で見つかったのは──
彼の帽子、裂けたユニフォーム片、そして深く抉れた土の跡。

争った形跡。
引きずられた痕。
しかし、Kamden 本人の姿は依然として見つからない。

その近くの木には、またしてもあの“紫の布”。

捜査班は震えた。

「これは……ただの事故じゃない」
「Nemesis は……本当に存在するのか?」

霧の奥で何かが動く音がした。

風ではない。
獣でもない。
悪意の形をした、“何か”だ。


◆ 6 そして物語は次の戦いへ

Grimcats は第1戦を落とし、背水の陣となった。
Kamden の失踪は深まるばかり。
そして、Nemesis の影は確実に近づいている。

次回──

第7話
「闇を裂く2戦目──霧の向こうの真実」

Fresh Hellions は王手をかけるのか。
Grimcats は逆襲できるのか。
そして、“紫の影”は次にどこへ現れるのか──。

物語は、さらに加速する。

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