フロンティア・クロニクル【第2話】調印式前夜──東と南の火花

フロンティア・タウンの中央に位置する、市庁舎の大会議室。
そこでは翌朝、四つの地区が正式にリーグ結成へと調印を交わす予定だった。

しかしその前夜、街の空気は妙にざわついていた。
東と南──JusticeFresh Hellion が、ついに正面衝突してしまったのだ。


目次

■ 発端:アッシュクレストの“壁”

事件は南のアッシュクレスト地区の、とある廃工場跡で起きた。

Justice の若い消防士出身の選手が、
「調印式前の街の安全パトロール」
の一環として地区巡回をしていた。

その彼が、工場の裏に描かれた巨大なグラフィティを見て眉をひそめた。

悪魔の角が生えた野球選手が、バットをへし折っている。
下にはスプレーで荒々しく描かれた文字。

“Burn the Order.”(秩序を焼き払え)

その目の前に、Fresh Hellion の選手たちがいた。

最も気性の荒い若者が言い放つ。

「気に入らねぇか? これが俺らの“挨拶”だよ。」

Justice の選手は冷静さを保とうとしたが、口が勝手に動いた。

「これは単なる落書きじゃない。反社会的な侮辱行為だ。」

次の瞬間、空気が変わった。
煽られた若者が一歩踏み出した。

「侮辱? 正義ヅラしたあんたらこそ嘘くせぇんだよ。」


■ 衝突:拳が飛ぶ前の“ギリギリ”

工場裏で緊張は限界まで張り詰めていた。

Fresh Hellion の選手たちがじりじりと距離を詰め、
Justice の選手は後退することなく、その場に立ち続ける。

そのときだ。

大通り側から、署長とHellionのアーティストが同時に駆け込んだ。

署長は怒号を飛ばした。

「拳を上げた瞬間、リーグは終わりだぞ!」

アーティストはヘリオン側に怒鳴り返す。

「てめぇら、調印式の前日に何してやがるッ!」

もう少し遅ければ、本当に殴り合いになっていた。


■ 余波:調印式が“開催中止”の危機に

市庁舎に緊急連絡が走った。
議長は困惑しながら言った。

「こんな状態で調印式などできない。
 公的なリーグに暴力沙汰の疑いがかかったら……」

四地区の代表が次々に集まり、空気は最悪だった。

  • Justice「秩序を乱す者と同じテーブルには座れない」
  • Fresh Hellion「堅物の説教を食らうためにリーグに入るんじゃねぇ」

話し合いは平行線。
テーブルの上には、まだ署名のない調印書。

その紙は、まるで“リーグの命そのもの”のように沈黙していた。


■ 転機:救急無線が鳴る

議論が平行線を迎えたそのとき、市庁舎の無線が突然鳴り響いた。

「アッシュクレスト地区で火災発生!
 負傷者の避難に協力要請!」

場の空気が一瞬で変わった。

Justice の消防士出身の選手たちは、椅子を蹴って立ち上がった。

Fresh Hellion のキャプテンは、歯を食いしばって言った。

「……行くぞ。こんな時に揉めてる場合じゃねぇ。」

二つの“最悪の相性のチーム”が、
同じ方向へ走りだした。

炎が赤く街を照らす中、互いに怒鳴り合いながらも救助活動を行う。

瓦礫を運ぶ腕がぶつかり、
指示が食い違っても、
誰ひとり引かなかった。

――少なくとも、“市民を守る”という点では。


■ 調印式の朝

火災は未明に鎮火した。

朝の市庁舎前に、疲れ切った二つのチームが並び立った。

議長が静かに問いかける。

「……まだ続けるつもりは、ありますか?」

Justice のキャプテンは、胸を張って答えた。

「秩序は、守るためにこそある。」

Fresh Hellion のリーダーは肩をすくめ、笑って言った。

「ま、続けてやってもいいぜ。面白くなってきたからな。」

その瞬間、議長は深く頷いた。

「それでは……フロンティア・リーグの創設を宣言します。」

拍手は起きなかった。
起きる体力が残っていなかった。

ただ、四つの地区の目が同じ先を見ていた。


■ この出来事の“意味”

秩序のJustice
反逆のFresh Hellion

この二つの対立は、リーグ成立前から街にとって大きな試練となった。

しかし火災を通して生まれた
“敵同士の最低限の信頼”は、

これから続く長い物語の
揺れ動く関係性の根っこ
となる。

これが、フロンティア・リーグの本当の第一歩だった。

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