「宇宙人のあいつ」レビュー|あらすじ・見どころ・演出意図を徹底解説【ネタバレあり】

「宇宙人のあいつ」というタイトルを見て、どんな映画を想像しますか?きっと多くの方は「B級のSFコメディかな?」と思うでしょう。でも実際に観てみると、これがとても心温まる家族の物語なんです。

この映画の主人公は、23年間も人間の家族として暮らしてきた宇宙人。そんな彼が故郷の星に帰るまでの、たった3日間の出来事を描いています。

監督は飯塚健さん。主演は中村倫也さん、伊藤沙莉さん、バナナマンの日村勇紀さん、柄本時生さんという、とても個性的なキャスト陣です。

「家族って何だろう?」という、とてもシンプルだけど深い問いかけが、この映画のテーマです。血がつながっていなくても、一緒に過ごした時間や思い出が、本当の家族を作るのかもしれません。

変わった設定の映画ですが、きっと観終わった後は温かい気持ちになれると思います。笑って、ちょっと泣けて、家族の大切さを改めて感じられる。そんな作品です。

目次

作品情報と基本データ

作品名: 宇宙人のあいつ
公開年: 2023年
制作国: 日本
上映時間: 117分
監督・脚本: 飯塚健
主要キャスト: 中村倫也、伊藤沙莉、日村勇紀、柄本時生
配給: ハピネットファントム・スタジオ
主題歌: 氣志團「MY SWEET ALIEN」

あらすじ(※ネタバレなし)

映画は、高知県ののどかな夜空に突然現れる炎と煙のシーンから始まります。一体何が起こったのか?この謎めいた光景の意味は、物語の最後に明かされることになります。

舞台は、美しい自然に囲まれた高知県。海と山に囲まれたのどかな町で、焼肉店「SANADA」を営む真田家には、4人の兄妹が暮らしています。

真田家の4兄妹

  • 長男・夢二(日村勇紀):両親を早くに亡くした後、兄妹たちの親代わりとなって焼肉店を切り盛りする熱血漢。家族思いで情に厚いが、女性には縁がなく、婚活パーティーでは連戦連敗
  • 長女・想乃(伊藤沙莉):真田家の紅一点で、しっかり者として兄妹をまとめる存在。しかし、DVを振るう恋人・神内との腐れ縁を断ち切れずに悩んでいる
  • 次男・日出男(中村倫也):23年前から真田家で暮らす、ちょっと変わり者。普段はあまり感情を表に出さず、何を考えているかわからない不思議な存在
  • 三男・詩文(柄本時生):地元のガソリンスタンドで働く末っ子。気弱で人がよく、高校時代の同級生・宍戸から些細な過去のことで逆恨みされ、嫌がらせを受けている

両親は早くに亡くなってしまいましたが、4人で支え合いながら、時にはケンカもしつつ、でも助け合って生活してきました。毎日一緒に食卓を囲み、それぞれの悩みを抱えながらも、なんとなく平穏な日々を送っていたのです。

衝撃の告白

ところがある日、長男の夢二が突然「真田サミット」の開催を宣言し、兄妹を食卓に集めます。そして、想乃と詩文に向かって、とんでもない事実を告白するのです。

「実は日出男は、人間の生態調査のために土星から来た宇宙人なんだ。そして3日後には、地球を離れなければならない」

最初はあまりの突拍子もない話に、にわかには信じることができない想乃と詩文。しかし、夢二が決定的な証拠を見せます。それは、これまで撮り溜めてきた家族写真の数々。どの写真を見ても、そこには長男・夢二、長女・想乃、三男・詩文の3人は写っているのに、次男・日出男の姿だけがありません。土星人は写真に写ることができないのだそうです。

この奇妙すぎる証拠を前に、想乃と詩文は意外にもあっけなくその事実を受け入れてしまいます。確かに言われてみれば、日出男は少し変わっていたし、家族の中でも少し浮いた存在だったかもしれない…。

残された3日間での奮闘

23年間という長い歳月を、真田家の次男として過ごしてきた日出男。彼にとって地球時間の23年は、土星時間ではわずか1年に過ぎないのだそうです。人間の「家族」という概念を理解するために地球にやってきた彼でしたが、いよいよ故郷の星に帰る時が来てしまいました。

残された時間は、たったの3日間。

これまで日出男は、家族の問題を客観的に観察することはあっても、積極的に関わることはありませんでした。しかし、地球での最後の3日間で、彼は初めて兄妹たちが抱える現実的な問題に、自分なりの方法で向き合おうと決意します。

想乃のDV彼氏の問題、詩文への嫌がらせ、そして夢二の孤独な奮闘…。宇宙人としての特殊な能力を使いながら、日出男は人間として「やり残したこと」を成し遂げようと奮闘します。果たして彼は、3日間で本当の「家族」の意味を理解することができるのでしょうか?

そして、避けては通れないお別れの時。日出男には、まだ家族に言えない、もう一つの重大な秘密があったのです…。

「宇宙人のあいつ」予告編
出典:Youtube

見どころ・注目ポイント

キャスト4人の絶妙なチームワーク

この映画の一番の魅力は、4人の兄妹を演じる俳優さんたちの自然な関係性です。

中村倫也さんの日出男は、普段からちょっと不思議な雰囲気を持つ彼にぴったりの役。「宇宙人だから変わってるのか、この人が変わってるから宇宙人役なのか」と思ってしまうほど、役にハマっています。

日村勇紀さんの夢二は、コメディアンならではの自然な明るさで、家族を支える兄の役を温かく演じています。時々見せる熱すぎる一面も、愛すべきキャラクターとして描かれています。

伊藤沙莉さんと柄本時生さんも、それぞれの個性を活かしながら、本当の兄妹のような空気感を作り出しています。

笑えるけど心に響くストーリー

飯塚健監督は、おかしな設定やキャラクターを作るのがとても上手な人です。この映画でも、日出男がWiFiルーターになったり、しゃべるじゃがいもが出てきたりと、「え?何それ?」と思うようなシーンがたくさんあります。

でも、ただ笑わせるだけではありません。そんな変なシーンの裏に、家族の愛情や絆についての深いメッセージが込められています。

宇宙人という、まったく違う存在の目を通して見ることで、私たちが当たり前だと思っている「家族」の素晴らしさが、改めて見えてくるのです。

高知の美しい風景と心地よい音楽

映画は全て高知県で撮影されていて、美しい海や山の風景が物語に温かい雰囲気を与えています。

また、氣志團が作った主題歌「MY SWEET ALIEN」も、映画の世界観にぴったり。聴いているだけで、なんだか胸が熱くなってきます。

気になった点

とても良い映画ですが、気になる点もいくつかあります。

まず、この映画の独特なギャグセンスは、好みが分かれるところです。飯塚監督の作品が好きな人には最高に面白いのですが、このノリについていけない人には「なんだかよくわからない映画」に感じられるかもしれません。

ただ、宇宙人の設定については、実はこの「よくわからなさ」が絶妙だなと思いました。だって、本当に宇宙人に会ったことがある人なんていないわけですから、何がリアルで何がリアルじゃないかなんて、誰にもわからないですよね。日出男の能力が突然出てきたり、土星の設定が後から明かされたりするのも、「宇宙人ってそういうものかも」と思えてしまいます。

また、想乃の恋人のDVの話や、詩文へのいじめといった重い現実的な問題が、宇宙人というファンタジーな設定の中に混ざっているのも面白いポイントです。この現実とファンタジーのアンバランスさが、逆に日常の中の不思議さを際立たせていて、飯塚監督らしい絶妙なさじ加減だと感じました。

⚠️ ネタバレあり|物語の展開と深掘り考察

※ここから先は映画の結末まで含むネタバレがあります

隠されていた本当のミッション

物語が進んでいくと、日出男には家族に言えない秘密のミッションがあることがわかります。

それは、「調査した家族の中から1人を選んで、土星に連れて帰らなければならない」という、とても残酷な任務でした。しかも、土星は素晴らしい場所ではなく、罪を犯した人が送られる、刑務所のような星だったのです。

23年間、本当の家族のように過ごしてきた日出男にとって、この選択はあまりにもつらいものでした。家族の誰かを犠牲にするか、自分が罰を受けるか。究極の選択を迫られたのです。

感動的なクライマックスと驚きの結末

家族会議の結果、みんなの親代わりをしてきた夢二が、自分が土星に行くと決めます。

お別れの夜、日出男は座椅子(実は宇宙船でした)に夢二を乗せて、夜空に向かって飛び立ちます。しかし空の上で、日出男は最後の決断をします。

夢二を犠牲にすることを拒否し、一人で地球を離れることにしたのです。

宇宙船から切り離された夢二は、焼肉屋の屋根に落下。お店は燃えてしまいます。これが映画の最初に出てきた、謎のシーンの正体でした。

そして時が過ぎて、想乃に赤ちゃんが生まれます。その赤ちゃんから、土星の言葉「じゃらららら〜」が聞こえてきます。

これは日出男が、想乃の子供として生まれ変わって、今度こそ本当の家族の一員になったことを表しているのです。

この映画が伝えたかったこと

「家族って何?」という日出男の質問に、夢二は答えます。

「自分よりも、大切なものがあるってこと」

土星には「家族」という考え方がありません。みんな自分のことだけを考えて生きています。でも地球の家族は違います。時にはケンカもするけれど、お互いのことを自分より大切に思っている。

日出男は23年かけて、この「家族の愛」を学びました。そして最後には、自分の命をかけてでも家族を守ろうとしたのです。

赤ちゃんとして生まれ変わる結末については、いろいろな意見があります。でも私は、これこそが「本当の家族になる」ということなのかなと思いました。血のつながりがなくても家族にはなれるけれど、本当の意味で家族の一員になるには、最初から一緒に育つ必要があるのかもしれません。

この映画をおすすめしたい人

「宇宙人のあいつ」は、こんな人におすすめです:

  • 家族の大切さを改めて感じたい人:血のつながりを超えた絆について考えさせられます
  • 笑って泣ける映画が好きな人:コメディと感動がバランス良く楽しめます
  • 中村倫也さん、伊藤沙莉さんのファン:二人の自然な演技が堪能できます
  • ちょっと変わった映画が好きな人:普通の映画では味わえない、独特の世界観があります
  • 心温まる映画を探している人:観終わった後、優しい気持ちになれます

逆に、本格的なSF映画やシリアスなドラマを期待している人には、少し物足りないかもしれません。

まとめ・総評

「宇宙人のあいつ」は、変わった設定の中に、誰もが共感できる家族の愛を込めた、とても温かい映画です。

完璧な作品とは言えないかもしれませんが、観終わった後に感じる「家族っていいな」という気持ちは、本物だと思います。

笑いあり、涙あり、そして最後にはほっこりとした気持ちになれる。そんな映画を探している人には、ぜひ観てもらいたい作品です。

きっと、あなたにとっての「家族」についても、改めて考えるきっかけになるはずです。

中村倫也×伊藤沙莉×日村勇紀×柄本時生『宇宙人のあいつ』4兄妹わちゃわちゃトーク!
出典:Youtube

English Summary

My Alien Brother – Full Review, Synopsis & Analysis

TL;DR

My Alien Brother is a touching sci-fi drama that explores themes of family, identity, and belonging through the lens of extraterrestrial arrival. It follows the emotional journey of siblings as they come to terms with their brother’s alien origins, blending speculative elements with resonant human conflict.

Background and Context

The work builds on the tradition of domestic sci-fi—stories where the extraordinary intrudes into everyday life. By placing an alien within the family unit, My Alien Brother frames questions about difference, acceptance, and the nature of “home.” It echoes earlier works in the genre that use alien metaphors to reflect on immigration, otherness, and familial bonds.

Plot Summary (No Spoilers)

A seemingly normal family life is disrupted when one sibling discovers that their brother is not human—but an alien visitor. As his time on Earth is limited, the other siblings grapple with fear, curiosity, and love. The narrative charts how each family member reacts: denial, anger, protectiveness, and ultimately, reconciliation.

Key Themes and Concepts

  1. Family & Belonging — The alien brother’s presence forces the family to redefine what it means to belong.
  2. Otherness & Identity — His alien origin becomes a metaphor for any kind of difference (cultural, racial, personal).
  3. Acceptance vs Fear — The story emphasizes how love often requires overcoming innate fear of the unknown.
  4. Sacrifice & Letting Go — With the alien’s limited stay, emotional investment is tempered by the inevitability of departure.

Spoiler Section & Analysis

As the siblings’ tension peaks, they uncover that the alien brother’s mission on Earth is temporary — he must return to his home world soon. The climax involves a choice: whether to try to retain him by deceit or to help him depart with dignity. Some family members want to hold on selfishly, but ultimately, the narrative privileges the brother’s agency and the purity of farewell.

In its final act, the alien sibling leaves behind a transformative legacy: he reshapes how the family perceives love, identity, and what it means to be connected across difference. The emotional weight lies not in spectacle, but in quiet moments of acceptance and farewell.

Conclusion

My Alien Brother blends speculative fiction with deeply human emotion. It may not offer blockbuster visuals, but its strength lies in intimacy and theme. For readers or viewers drawn to sci-fi that centers on relationships, difference, and emotional resonance, this story offers a powerful reminder: sometimes the greatest alien is the one who teaches us what it means to be human.

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