「テトリス」と聞けば、きっと誰もが、あの音楽と落ちてくるブロックを思い浮かべますよね。世界で一番有名と言ってもいいくらい、みんなが知っているパズルゲームです。でも、そのテトリスが世界に広まるまでのお話が、まるでスパイ映画みたいにハラハラドキドキの展開だったことは、あまり知られていません。

2023年に公開された映画『テトリス』は、このビックリするような本当の話を描いた、手に汗握るビジネス・スリラーです。主演は『キングスマン』でおなじみのタロン・エガートン。彼が演じる主人公ヘンク・ロジャースが、たった一つのゲームに人生を懸け、危険なソ連(今のロシア)へたった一人で乗り込んでいく姿には、思わず「がんばれ!」と応援したくなります。
この記事では、「映画『テトリス』って面白そうだけど、どんな話?」という方のために、まずはネタバレなしで物語のあらすじや見どころを分かりやすくご紹介します。
そして、「もっと物語の裏側を知りたい!」という方のために、記事の後半ではネタバレありで、物語の核心部分や「実はこうだったんだ!」という深い部分まで、じっくり解説していきます。
誰もが知るゲームの、誰も知らなかった物語。この記事を読めば、次にテトリスをプレイするときの気持ちが、ちょっぴり変わるかもしれませんよ。さあ、一緒にゲーム誕生の裏側を覗いてみましょう!
作品情報と予告編

まずは、映画『テトリス』の基本的な情報と、予告編をチェックしてみましょう。これだけでもワクワクしてきますよ!
- 作品名(邦題/原題): テトリス(Tetris)
- 公開年/制作国: 2023年/イギリス・アメリカ合衆国
- 監督: ジョン・S・ベアード
- 脚本: ノア・ピンク
- キャスト:
- タロン・エガートン(ヘンク・ロジャース役)
- ニキータ・エフレーモフ(アレクセイ・パジトノフ役)
- トビー・ジョーンズ(ロバート・スタイン役)
- ロジャー・アラム(ロバート・マクスウェル役)
- トーゴ・イガワ(山内溥役)
- 文音(アケミ・ロジャース役)
- 配信サービス: Apple TV+(独占配信)
あらすじ(※ネタバレなし)
物語の舞台は1988年。日本でゲーム会社を立ち上げたものの、経営に苦しんでいたオランダ人起業家ヘンク・ロジャースは、アメリカのゲーム展示会で、運命の出会いを果たします。
そのゲームの名は「テトリス」。

引用元:CNN.co.jp
ソ連という謎の国で生まれた、誰も知らないゲーム。しかし、一度プレイしたヘンクは、その面白さに衝撃を受けます。「このゲームは、世界中を夢中にさせる!」と確信したのです。
ヘンkは会社のすべてを懸けて、まず日本でテトリスを売る権利を手に入れます。さらに、当時「ゲームボーイ」という新しい携帯ゲーム機を作っていた任天堂にアポなしで突撃!「このゲームはゲームボーイのためにある!」と熱く語り、社長を説得します。

しかし、テトリスの権利は、まるでパズルのように複雑に絡み合っていました。本当の持ち主は、ソ連の国営企業「ELORG」。しかも、イギリスの大企業もその権利を狙って動いていたのです。
「こうなったら、直接ソ連に行って話をつけるしかない!」
家族の心配をよそに、ヘンクはまだ西側の人間にとって恐ろしい場所だった、冷戦時代のモスクワへ一人で飛び込むことを決意します。
物語のキープレイヤーたち
この複雑な権利争奪戦を理解するために、物語を動かす3人の主要人物を紹介します。
H3: ヘンク・ロジャース:情熱の起業家
タロン・エガートンが演じる本作の主人公。日本でゲーム会社を経営するオランダ人起業家です。テトリスの可能性を信じ、会社の再起と自らの夢を賭けて、単身ソ連に乗り込む情熱と行動力の塊のような人物です。彼の誠実さと諦めない心が、閉ざされた鉄のカーテンをこじ開けていきます。
H3: アレクセイ・パジトノフ:悲運の天才開発者
ニキータ・エフレーモフが演じる、テトリスの生みの親。ソ連科学アカデミーに所属するコンピューター科学者です。純粋な知的好奇心から「完璧なゲーム」を生み出しますが、共産主義体制下ではその発明の権利も対価も得られず、国家に搾取される立場にあります。ヘンクとの出会いによって、彼の運命は大きく動き出します。
H3: ロバート・スタイン:西側への扉を開いた男
ハンガリー出身のビジネスマンであるロバート・スタインは、テトリスを鉄のカーテンの向こう側から西側世界へと最初にもたらした重要人物です。1985年に母国でテトリスと出会い、その可能性をいち早く見抜きました。彼がイギリスで設立した会社「アンドロメダ・ソフトウェア」を通じて西側向けのライセンス取得に動いたことが、この壮大な権利争奪戦の幕開けとなります。しかし、ソ連の国家組織との交渉は困難を極め、彼の結んだ曖昧な契約が、後に任天堂やミラーソフト社を巻き込む大きな混乱の原因となっていくのです。映画では俳優トビー・ジョーンズが、この複雑な状況に翻弄されるキーパーソンを巧みに演じています。
見どころ・注目ポイント
この映画がもっと面白くなる、4つの注目ポイントをご紹介します!
ただのビジネス映画じゃない!スパイ映画のようなドキドキ感
この映画の一番の魅力は、会社の権利交渉という少し難しそうなテーマを、まるで「スパイ映画」のように描いているところです。主人公ヘンクがモスクワに着いた途端、KGB(ソ連のスパイ組織)に監視されたり、部屋が盗聴されたり、危険な取引に巻き込まれたり…。これは単なるビジネスの話ではなく、当時のアメリカを中心とする「資本主義」と、ソ連の「共産主義」という二つの世界のぶつかり合い。ハラハラする展開の連続で、最後まで釘付けになること間違いなしです!
二人の主人公が魅力的!タロン・エガートンの熱演

『キングスマン』のタロン・エガートンが演じる主人公ヘンクは、とにかく情熱的でエネルギッシュ!夢を語るキラキラした目や、どんなピンチでも諦めない姿に、思わず「頑張れ!」と応援したくなります。一方、テトリスを開発したアレクセイは、抑圧された社会の中で静かに情熱を燃やす天才。この正反対の二人が、「ゲームが好き」という気持ちで心を通わせていく姿は、この映画で一番感動するポイントです。
懐かしくて新しい!80年代風のゲーム演出が楽しい

映画の途中には、昔のゲームみたいな8ビットの絵(ドット絵)でキャラクターが紹介されるなど、遊び心あふれる演出がたくさん出てきます。BGMにも、80年代に大ヒットした曲や、あの有名なテトリスのテーマ曲がカッコよくアレンジされて使われていて、物語をさらに盛り上げます。このレトロでポップな雰囲気が、シリアスな物語の良いスパイスになっているんです。
「当たり前」が通じない世界での戦い

この映画は、冷戦時代のソ連の雰囲気をリアルに描いています。今の私たちには想像もつきませんが、当時は個人のアイデアもすべて国のもの。ヘンクが当たり前だと思っているビジネスのルールが全く通用しません。そんな「アウェー」な状況で、どうやって相手を信じさせ、契約を勝ち取るのか。その姿は、今の時代の私たちにも、大切なことを教えてくれます。
気になった点
エンターテイメントとして最高の映画ですが、一つだけ挙げるとすれば、話を面白くするための脚色が少しあるという点かもしれません。
特に、映画の最後にある派手なカーチェイスは、実はフィクションです。本当の戦いは、あくまで会議室での静かな交渉でした。もちろん、このおかげで映画は最高に盛り上がるので、これはこれで大正解だと思います。
ただ、「全部が本当の話じゃないとイヤ!」という方には、少し「やりすぎ?」と感じる部分もあるかもしれません。でも、これはドキュメンタリーではなく、あくまで「本当の話を基にした映画」。この大胆な脚色こそが、この映画を面白くしている一番の理由とも言えるでしょう。
⚠️ ここから先は、映画の結末を含むネタバレが書かれています。まだ観ていない方は、ご注意ください!
ネタバレあり|物語の展開と深掘り考察

モスクワでの交渉は、ヘンクが想像した以上に大変なものでした。
テトリスの権利を巡っては、ヘンク(任天堂の代理)だけでなく、ロバート・スタイン、そしてイギリスのメディア王ロバート・マクスウェルという、3つの勢力が「自分に権利がある!」と主張し、火花を散らします。
さらに、交渉を監視していたKGBの役人トリフォノフが、この取引を利用して大金を得ようと企んでいました。彼はヘンクを脅したり、開発者アレクセイの家族を危険な目に遭わせると脅迫したりと、汚い手を使ってきます。
まさに絶体絶命のピンチ。そんな中でヘンクの武器となったのは、「ウソをつかない誠実さ」と「テトリスへの純粋な愛」でした。彼はアレクセイと秘密の場所で会い、ゲームについて熱く語り合うことで、国や立場の壁を越えた友情を育みます。この友情が、最終的に奇跡を起こすのです。

最後の交渉で、ヘンクは任天堂の資金力をバックに、ライバル会社を上回る条件を提示します。そして、アレクセイの協力もあって、ついに「携帯ゲーム機版」の独占契約書にサインをもらうことに成功!
しかしその直後、計画を邪魔されたKGBのトリフォノフが、部下を連れてヘンクを捕まえに現れます。空港でのハラハラドキドキの脱出劇の末、ヘンクは間一髪でモスクワを脱出。彼が命懸けで持ち帰った契約のおかげで、任天堂のゲームボーイはテトリスと一緒に発売され、世界中で大ヒット商品となったのです。
テーマとメッセージの読み解き
この映画は、ただの成功物語ではありません。私たちに大切なことを教えてくれる、3つのテーマが隠されています。
- 国や立場を超えた、熱い友情の物語資本主義の世界で生きるヘンクと、共産主義の国で暮らすアレクセイ。普通なら絶対に出会わない二人ですが、「面白いゲームを世界に届けたい」という同じ情熱が、彼らを固い絆で結びつけました。どんなに大きな壁も、個人の信頼と友情が打ち破れるんだ、という熱いメッセージが伝わってきます。
- 自分のアイデアを守ることの大切さアレクセイは、あれだけすごいテトリスを発明したのに、国にすべてを取り上げられ、1円ももらえませんでした。この物語は、「アイデアや作品には価値があり、それを作った人が正当に評価されるべきだ」という、知的財産権の大切さを教えてくれます。映画の最後に、二人が会社を作ってアレクセイが初めて報酬を得る場面は、本当に感動的です。
- 夢を諦めず、行動することの勇気周りの誰もが「無理だ」と言うことに、ヘンクは挑戦しました。危険をかえりみず、たった一人でモスクワへ飛び込む。その姿は、常識を疑い、自分の情熱を信じて行動することが、世界を変える力になるんだと教えてくれます。
この映画をおすすめしたい人
- 一度でもテトリスで遊んだことがある、すべての人
- Facebookの誕生を描いた『ソーシャル・ネットワーク』のような、実話ベースの映画が好きな人
- ハラハラドキドキするスパイ映画やサスペンスが好きな人
- 夢に向かって頑張る主人公の姿に、元気や勇気をもらいたい人
- ゲーム業界の裏側や、ビジネスの歴史に興味がある人
まとめ・総評
映画『テトリス』は、世界一有名なゲームの、誰も知らなかった誕生秘話を、最高のエンターテイメントに変身させた傑作です。
本当の話を基にしながらも、スパイ映画のような大胆な脚色を加えることで、ビジネス交渉の緊張感と、冷戦時代のスリルを見事に描き出しています。タロン・エガートンの熱演が光る主人公の諦めない心と、国境を越えた友情の物語は、観る人の心をきっと熱くするでしょう。
これはただのゲームの映画ではありません。情熱と友情が、いかにして大きな壁を乗り越え、世界を変えることができるかを描いた、感動の人間ドラマなのです。
English Summary
Tetris (2023) – Full Review, Synopsis & Analysis
TL;DR
Tetris (2023) is a high-stakes business thriller set during the Cold War, depicting the dramatic real-world struggle over the rights to the legendary puzzle game. Starring Taron Egerton as Henk Rogers, the film combines geopolitical intrigue, personal passion, and corporate warfare. It’s more than a “game movie” — it’s a story about ambition, friendship, and daring under pressure.
Background and Context
Directed by John S. Baird, Tetris was released in 2023 as a British-American production. It dramatizes real events surrounding the licensing battles over Tetris, involving actors such as Nintendo, Soviet agencies (ELORG), and corporations vying for control. The film blends historical fact with narrative embellishment to heighten suspense and emotional stakes.
Plot Summary (No Spoilers)
In 1988, struggling entrepreneur Henk Rogers discovers Tetris at a game convention and becomes convinced it could become the world’s next great hit. He acquires rights to distribute it in Japan and boldly approaches Nintendo, pitching Tetris as a perfect match for the upcoming Game Boy. However, the deeper conflict lies in negotiating with the Soviet state agency ELORG, along with contending with shadowy competitors and KGB interference. Facing threats, deception, and political barriers, Henk must risk everything to bring Tetris to global audiences.
Key Themes and Concepts
- Passion vs. Power Structures — The film contrasts individual enthusiasm with entrenched institutional interests.
- Friendship Across Ideology — Henk and Alexey (the game’s original creator) form a bond despite vastly different political systems.
- Value of Ideas & Intellectual Property — It interrogates who “owns” creativity and how value is assigned.
- Courage in Adversity — The narrative emphasizes integrity, risk, and perseverance in hostile terrain.
Spoiler Section & Analysis
As tensions rise, three factions clash: Henk, ELORG, and rival business interests (including the UK media mogul Robert Maxwell). The KGB plots to exploit the conflict to their own advantage, threatening Henk and Alexey personally. In a climactic deal, Henk secures the exclusive handheld rights for Nintendo, but just as the contract is signed, KGB agents pursue him. He narrowly escapes with the deal in hand, ensuring Tetris’s journey into global fame via the Game Boy.
The film heightens reality for narrative impact—e.g., the dramatic chase and espionage sequences are largely fictional, but serve to amplify Cold War suspense. The story’s emotional core remains the relationship between Henk’s idealism and Alexey’s creative passion, turning business into courageous storytelling.
Conclusion
Tetris (2023) transcends its subject matter by delivering political suspense, emotional resonance, and a testament to creative determination. It’s compelling not just for gamers, but for anyone intrigued by how ideas cross ideological divides. While the film “embellishes” history, its heart lies in the risk and ingenuity that powered a small game into a global phenomenon.
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