イタリアの名匠ロベルト・ロッセリーニが、終戦直前に作られたリアリズム(ネオレアリズモ)映画の代表作です。
大戦末期、ゲシュタボと戦うレジスタンスたちの戦いの話を、イタリア側からは戦争の悲惨さ、ドイツ側からは戦争のむなしさを描いた作品です。
監督:ロベルト・ロッセリーニ
脚本:セルジオ・アミディ / フェデリコ・フェリーニ / チェレステ・ナガルヴィッレ / ロベルト・ロッセリーニ
原案:セルジオ・アミディ / アルベルト・コンシーリオ
制作:ペッピーノ・アマート
出演:アルド・ファブリッツィ / アンナ・マニャーニ / マルチェロ・パリエーニ 他
公開:1945年9月27日(イタリア) / 1950年11月17日(日本)
制作国:イタリア
「無防備都市」あらすじとネタバレ
時代は第2次世界大戦末期、イタリアは同盟国だったドイツに占領されてしまう。
舞台はローマ。ゲシュタポはマンフレディという男を探していた。
マンフレディは反ナチス解放戦線の幹部であり、ゲシュタポはマンフレディがある宿屋にいるとの情報を得、捜索したのだが、逃げられていた。
マンフレディは同士フランチェスコの家を訪ねるがおらず、ちょうど帰ってきた婚約者のピナと出会う。
そこで出会ったピナの妹は、マンフレディの恋人で女優のマリナ・マリと知り合いだった。
フランチェスコの家で妹に出会ったマンフレディは、しばらく会えないことをマリナに言付けてほしいと頼む。
ピナは2人の息子を持つシングルマザーであり、その息子たちも近所の少年たちとグループを作り、レジスタントとして活動していた。しかし大人たちはそれを知らなかった。
ピナは息子のマルチェロにピエトロ神父を喚びに行かせる。
ピエトロ神父も解放戦線の同士であり、マンフレディは、一般人が出歩けない夜に軍資金を運搬する作業を神父にお願いする。
ピエトロ神父はフランチェスコに合流し、軍資金を隠した本を受け取り、そしてフランチェスコはマンフレディと合流する。
映画監督ロベルト・ロッセリーニ(1906-77)は今日5月8日が誕生日。
ネオレアリズモの代表であると同時に、それを超越した映画作家。
「ネオレアリズモとは、世界を見る際にとる倫理的立場だ」
『無防備都市』『ドイツ零年』『神の道化師、フランチェスコ』『イタリア旅行』他 https://t.co/U4cB64gJpr pic.twitter.com/0qnf6kLlZW— nave (@nave4000) May 7, 2018
結婚式の悲劇
フランチェスコとピナの結婚式の日、いきなりナチスが教会を取り囲んでレジスタンスの捜索を始める。
マンフレディとフランチェスコは隙をみて逃げ出すが、フランチェスコは捕まってしまう。
トラックで連れて行かれる彼を見たピナはそれを追いかけたため、銃殺されてしまう。
映画史に残る衝撃的なシーン、、
ロベルト・ロッセリーニの『無防備都市』より
#映画で印象に残っている走る人 pic.twitter.com/NtqVfagku9
— 高知の電車は謝りながら走っちゅうぜよ (@kochinodensha) November 10, 2016
フランチェスコを乗せたトラックはレジスタンスの仲間の襲撃に遭い、そのどさくさに紛れてフランチェスコは逃げ出すことに成功する。
マリナの裏切り
マリナ・マリと合流したマンフレディはマリナのカバンの中から麻薬を発見する、それがもとで喧嘩をしてしまう2人。マリナはゲシュタポの女性隊員イングリッドに以前から麻薬を買っていて、麻薬中毒になっていた。
マリナはイングリッドに連絡して、マンフレディたちの居場所を通報する。
マンフレディ、フランチェスコ、ピエトロ神父の3人捕まってしまう。しかし他のレジスタンスたちはその事実を知らなかった。
跡を継ぐもの
マンフレディら3人を捕まえたことをレジスタンスたちに知られる前に、レジスタンスの拠点を聞き出そうとするゲシュタポ。
まず、マンフレディは喚ばれ尋問を受けるが答えなかったため、隣の部屋で拷問を受けることになる。
次に喚ばれたピエトロ神父もなかなか答えないため、神父にマンフレディの拷問を見せる。
その間待っていたフランチェスコは恐怖に耐えられなくなり、首を吊って自殺する。
拷問でマンフレディは死んでしまう。それを見た神父は「畜生ども!おまえらは地獄に落ちるんだ!」と言い放つ。そしてマリナはマンフレディの姿を見て気絶する。
次の日の朝、丘の広場でマルチェロたち少年レジスタンスがみている前でピエトロ神父は銃殺刑にされる。
少年たちは肩を落とし、丘を下っていった。
「無防備都市」(1945)
ロベルト・ロッセリーニ監督イタリアの映画潮流”ネオリアリズモ”の代表作。
写実的でリアリズムを追求した映像が戦時下のイタリアを残酷に切り取る。
人種に優劣はない。暴力で心を挫くことは出来ない。そんな反戦への強い主張を感じる力強い傑作だ。 pic.twitter.com/YsTwxhOk4X— Ludovika@劇場からの失踪 (@Arch_Stanton23) May 21, 2020
「無防備都市」感想
公開日が1945年ということで、いつどうやって作ったのか気になりますが、歴史的には1944年6月にローマは解放されています。
監督のロッセリーニは1944年夏にセルジオ・アミディと2人で原案を考え出し、それから作り始めたそうです。
色々な実際のエピソードを参考にして構成されており、ピストロ神父は、実在したドン・パッパガッロ神父の話を参考にしています。
ドン・パッパガッロ神父はレジスタンスの為に偽物の身分証を作っており、最後には処刑されています。
そしてフランチェスコの恋人ピナは、ローマのチェザーレ通りでテレーザ・グッラーチェという妊婦が銃殺されたという新聞記事をみて参考にしたそうです。
ピナ役のアンナ・マニャーニは作品内でドイツ兵に対して強気な女性を演じていますが、実際にもムッソリーニ失脚後にドイツ兵が市民の自転車を取り上げた際に、農場で使っていた大八車を押して大通りを走りながらドイツ兵を怒鳴ったという話があります。映画そのままの感じですね。
ラストシーンで神父を射殺する兵士たちが、少年たちの口笛に感化されて、なかなか致命傷を与えられないところ、そして肩を落として帰っていく少年たちのシーンは、制作がまだ戦争中だったせいか、この状況が続いても、この少年たちの中から第2、第3のピエトロ神父やマンフレディのような人物が出てくるからあきらめるな!というメッセージを入れたように感じます。