「クリーピー 偽りの隣人」 あらすじと少しネタバレ

サスペンス(邦画)

今回は度々コンビでドラマや映画に出ていた香川照之と西島秀俊がダブル主演の「クリーピー 偽りの隣人」を紹介。

原作は第15回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作を受賞。監督は「CURE」や「ドッペルゲンガー」「散歩する侵略者」など、日常に潜むサイコな世界観を描くのが得意な黒沢清。

「クリーピー 偽りの隣人」作品紹介

監督:黒沢清

脚本:黒沢清 / 池田千尋

原作:前川裕『クリーピー』

製作:高橋敏弘 / 木下直哉 / 長澤修一 / 丹下伸彦 / 高橋誠

製作総指揮:大角正

出演者:西島秀俊 / 竹内結子 / 川口春奈 / 東出昌大 / 香川照之

配給:松竹 / アスミック・エース

公開: 2016年6月18日

 

 

「クリーピー 偽りの隣人」あらすじ

捜査一課の刑事・高倉幸一 ( 西島秀俊)は取調室から脱走したサイコパスの容疑者に怪我を負わされ、それが原因で警察をやめる。

その後、犯罪心理学の教授として大学に赴任する。

 

彼と妻の康子(竹内結子)は引っ越しをし、そこでぶっきらぼうで嫌味ったらしい隣人、西野雅之 (香川照之)と出会う。

西野は妻と娘の3人家族であり、康子と西野が話している時に、学校から帰ってきた娘の澪 (藤野涼子)と初対面する。

 

初めは西野のことを嫌っていた康子だったが、愛犬マックスが西野になついたことでその気持ちがだんだん消えていく。

 

同じ頃、大学での資料から8年前に起きた一家失踪事件(未解決)に興味を持った高倉。そこの家を見に行ったことが元同僚の野上刑事 ( 東出昌大)に知れ、2人でその事件を追うことになる。

その事件は一家3人が突然失踪し、唯一見つかった娘の本多早紀 (川口春奈)の証言が曖昧だったため、事件として扱われていた。

早紀は事件当時の記憶をほとんど失っていた。しかし断片的には覚えており、その中には隣りに住んでいた”水田”という男を見たことも含まれていた。

隣の水田家は空き家になっていた。野上はその家で厚手のゴミ袋に密封保存された5つの遺体を発見する。

 

そんな時、帰宅途中の高倉は西野澪に呼び出される。そして衝撃的な告白をされる。

「あの人、おとうさんじゃありません!」


 

「クリーピー 偽りの隣人」感想(ネタバレ)

香川照之が怪しい隣人役、そしてそれを追う元刑事が西島秀俊という組み合わせに惹かれて鑑賞。黒沢清が監督ということで、少しグロめの展開を予想していました。

多くのレビューを見る限り、原作の展開をだいぶ削除(後半はほとんど別のお話)になっていることで、原作から見た方の評価は結構低いです。

原作との違い

原作では野上の存在が結構重要になっています。映画では野上は純粋に事件を追い、その顛末などは原作と同じです。しかし原作では彼には腹違いの姉兄がおり、その兄が重要な役どころ(おそらく犯人)であることは全く触れられません。というか全く話が違っています。

あと、澪は原作ではすぐに保護されていますが、ラストまで西野に協力的(反抗しない)です。しかしラストでは、倒れている西野に向かって「ざまあみろ!」と言い放ちます。

注射の中身は何?

今回、わからないことが多くあります。西野はある薬(覚せい剤のような液を注射する)で相手を薬漬けにするのですが、その薬は何なのでしょう。

康子が薬漬けになり、高倉が助けに行くのですが、西野を捕まえようとする高倉に康子はその薬を注射します。その即効性はものすごく、すぐに高倉は気を失ってしまいます。結局その薬がどういうものだったのかは分からずじまいです。

しかしこれに関しては、わかったところで何も影響はないことが見終わってわかりました。

本多早紀(川口春奈)が助かった理由

隣の水田家で見つかった5つの遺体のうち、3体が早紀の家族のものであると判明します。西野が犯人としてなぜ早紀だけが生き残ったのでしょうか?

西野が澪に、彼女の母親を殺すように命令するシーンがあります。しかし澪がなかなか銃を撃たないため、西野が代わりに仕方なく殺します。そこで「お前の厄介事を全部オレがやってやってるんだ!」と怒ります。

澪は脅されている割には、結構淡々と自分の父親や兄の死体処理を西野から命じられてやっていました。

もしかして澪が何かしらの理由で父親か兄を殺し、たまたま知り合ったサイコパスの西野が死体処理を手伝った・・・という考えが浮かびました。

 

そうなると自分から好んで殺人を侵さない西野が、早紀以外の家族を殺したという事実が曖昧になります。

早紀が家族3人を殺してしまい、その処理を隣に住んでいた西野に頼んだ・・・という仮説も生まれてきます。現に高倉が西野の写真を見せた時にはっきり「違う」と否定しています。犯人の顔を殆ど覚えてないはずなのに・・・

 

澪も早紀も、自分の味方だと思ったから殺さなかった・・・もともと直接は殺せないから・・・だから生きているという仮説です。

 

でも後半に西野は数人殺していますので、この仮説自体も曖昧になってしまいました。

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想像を掻き立てられる終わり方

先程も書きましたが、原作を読んだ方にとっては不評のようです。私としてもわからない部分でスッキリしませんが、色々と想像を掻き立てられ、見終わったあとに誰かと議論したくなるような作品でした。

 

結局、西野(に・・なりすました男)は誰だったのか?

康子のマインドコントロールは解けたのか?(ラストシーンで抱き合うも、叫び泣いたのは安堵感からか、別の理由か)

西野が倒れ、弾がなくなっても高倉が撃っていた方向が、西野に対してなのか、罵倒しながらも近づいていた澪に対してなのか?(澪もサイコパス化の可能性ありな行動をしているため)

私は原作を読まない人間なので、これだけで満足です。

 

そして映画自体(原作関係なしとして)は結構評価されており、この映画を見た「ニューヨーク・タイムス」のマノーラ・ダーギスは香川照之を「第89回アカデミー賞の主演男優賞にノミネートされるべき5人」に選出したそうです。

第90回キネマ旬報ベスト・テン(2017年)の日本映画ベスト・テン 第8位に選出、第71回毎日映画コンクールの男優助演賞、監督賞、撮影賞、美術賞、録音賞にもノミネートされました。

いい意味で予告編からの期待を裏切ってくれました。オススメです。

 

もともと香川照之は怪演で有名ですが、この作品でのサイコぶりは見事だと思います。

今はいろいろあって、自粛中ですが俳優としては最高です。

 

TBSの日曜劇場「流星ワゴン」の舞台となったわが町。エキストラで参加したときの香川照之はとても気さくで好印象でした。個人的には早く復帰して、さらなる怪演を見せてほしいものです。

 

いい意味で予告編からの期待を裏切ってくれました。オススメです。

 

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