今回は横溝正史の長編推理小説の映画化作品を紹介します。
公開当時は挿入歌にビートルズの「Get Back」と「Let It Be」が使われたこと、そして原作者の横溝正史が映画完成直後に亡くなったことなどが話題となりました。
今回の重要人物を演じた岩下志麻さんの演技は妖艶であり美しくもあり、そして恐ろしいです。
「妖艶」と言う言葉がこれ程当てはまる女性はいるだろうかと思う程、この映画の岩下志麻様の妖気漂う美しさは尋常ではありません。内側にある狂気が外に滲み出て観る者を慄かせる迫力に圧倒されます。#悪霊島#キャチコピーが印象的 pic.twitter.com/RnxfAFOpVX
— パンラ (@panra428) January 10, 2021
監督:篠田正浩
脚本:清水邦夫
原作:横溝正史
製作:角川春樹 / 橋本新一(プロデューサー) / 飯泉征吉(プロデューサー)
出演者:鹿賀丈史 / 室田日出男 / 古尾谷雅人 / 岩下志麻 / 岸本加世子 / 伊丹十三 / 佐分利信 他
音楽:湯浅譲二
撮影:宮川一夫
編集:浦岡敬一
製作会社:角川春樹事務所
配給:東映洋画 / 日本ヘラルド
公開 :1981年10月3日
「悪霊島」動画配信情報(2022年8月9日時点)
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「悪霊島」あらすじ
1969年(昭和44年)、私立探偵の金田一耕助(鹿賀丈史)は億万長者であり、もともと瀬戸内海に浮かぶ刑部島(おさかべじま)出身だった越智竜平(伊丹十三)から刑部島に行ったきり行方不明となっている青木という男の捜索を頼まれる。
(この時点では、まだ金田一は越智が刑部島出身だとは知らない)
その青木という男は、刑部島から本土にやってくる連絡船の中で死亡していた。青木は死ぬ間際に「あの島には恐ろしい悪霊が取り憑いている・・・鵺の鳴く夜は気をつけろ・・・」と意味不明な言葉を発していた。
広島県にやってきた金田一ひょんなことでヒッピー風の青年、三津木五郎(古尾谷雅人)と出会う。金田一は、連絡船で刑部島に向かおうとするも、連絡船乗り場でたまたま県警の磯川警部(宝田日出男)と出会う。磯川は近くで殺しがあったので雑談ついでに金田一を現場に連れて行く。
死んだのは浅井ハル。市子(巫女の一名で、イタコのようなことをする)であったが、噂では産婆のような仕事もしていたという。
その浅井ハルが戦前にしか置いてなかった刑部神社の御神籤を持っていたこと、金田一の依頼人、越智が刑部島出身であること、探している青木が連絡船で死んだことなどが、何かしら繋がっていると感じた金田一は刑部島に向かうことになるのだが・・・
監督の篠田正浩と岩下志麻の関係
今回の舞台、刑部島最高権力者、刑部大膳(佐分利信)の双子の娘である巴とふぶきを岩下志麻が演じています。この映画の重要人物である巴とふぶきには秘密があり、それがこのお話の核となっていきます。
その岩下志麻とこの映画の監督を努めている篠田正浩は実際のご夫婦です。
#求婚の日
岩下志麻さんが篠田正浩監督とマンボを踊っている時、
「私、監督と結婚する様な気がします」と、
大胆告白をしたエピソードがとても好きです🥰 pic.twitter.com/RJZDOUuGXu— Eine*9/3極彩パビリオン (@EineBlume70s) January 27, 2021
2人は1966年(昭和41年)に結婚して「表現社」という独立プロダクションを立ち上げます。そこで「心中天網島」(1969年)、「無頼漢」(1970年)、「沈黙 SLLENCE」(1971年)、「はなれ瞽女おりん」(1977年)などを共同で作りました。
出演者の過去の横溝作品出演について
今作の登場人物で、過去に金田一耕助の映画に出ていた方をちらっと紹介します。
まず、島の最高権力者である刑部大膳を演じた佐分利信はこの作品の4年前、1977年に公開された「獄門島」において重要人物として登場しています。
重要人物というか、犯人役です。「獄門島」では最後に海に身を投げて絶命してしまいました。
#興味ない人には見分けがつかない#佐分利信 #横溝正史#獄門島 #悪霊島#市川崑 #篠田正浩#了然和尚 #刑部大膳 pic.twitter.com/bUOoQ89q4U
— YOKOHAMA2020 (@9RJNo0rlxVsixCP) February 12, 2022
そして2人目は岩下志麻演じる巴の夫、刑部守衛を演じた中尾彬です。
中尾彬は1975年の映画「本陣殺人事件」において、ヒッピー風の現代的な金田一耕助を演じました。みなさんの知っている少し嫌味でねちっこい演技(笑)とはうらはらに、優しい青年風(ちょっとおじさん入ってる?)で、いつもと違った中尾彬が見られます。
こんにちは。悪霊島の映画で思い出しましたが、本陣殺人事件の金田一役の中尾彬さんがヒロインの夫役で出演しているんですよね⁉️😅💦 pic.twitter.com/VkjF8ZTJPv
— トラッドボーイ (@SztpQo85IWNvZnP) December 28, 2021
原作との違い(ネタバレあり)
映画化にあたり、原作と大きく違っている点を紹介します。
1,映画では三津木五郎は巴と越智の子供であると思いこんでいたがそうではなく、結局誰が親なのかは分からずじまいとなっていますが、原作では磯川警部の子供でした。実際には死産したと思いこんでいましたが、その時の産婆が浅井ハルであり、巴と越智の子供を五郎の親に渡すはずが、シャム双生児だったために急遽、磯川警部の妻の子供を差し出していました。
これを知った磯川警部は金田一にすべてを話し、事件から手を引いています。
しかし原作の最後には、磯川警部と五郎が名乗り合うシーンがあります。
2,巴とふぶきは双子ではなく、二重人格でした。それは刑部大膳が越智との身分違いを嫌って強引に別れさせたことがきっかけでした。そのショックで越智と似た男を誘っては体の関係を持つふぶきという人格が生まれたのでした。
映画では父親である刑部大膳が、関係を持った男たちが口外しないように殺していましたが、原作では巴(人格はふぶき)が男たちを殺していました。
3,巴(人格はふぶき)は洞窟内でシャム双生児の骨を探している最中に穴に落ちて絶命しますが、原作では行方不明になります。頭がおかしくなり、それを不憫に思った?越智が岬から巴を突き落として殺すのです。金田一は気づいていましたが、刑事でもないし、死体も見つからなかったので立件すらできません。
映画での越智は巴の変わりようを見てショックを受け、その死に様も目の当たりにしたせいか、レジャー計画をやめてしまいますが、原作の越智は黙々とレジャー計画を進めていきます。
「悪霊島」感想
鹿賀丈史の金田一耕助が、飄々としてて違和感なく見れました。しかしなんといっても岩下志麻さんの演技には脱帽です。はじめは清楚でおしとやかな雰囲気だったのが、ふぶきになった瞬間に妖艶でみだらになっていく様、それをほぼ眼力だけで表現するのが、さすがです。
「悪霊島」、なかなか良かった。岩下志麻さんの「分裂」っぷりは狂気と愛嬌を行き来し、時に凄まじい妖気を放っていた。しかも、分厚い色香が加わるから尚更凄みがある。金田一役の鹿賀丈史さんは飄々としながらCool。石坂さんと双璧。 pic.twitter.com/HFeKFs7hkH
— Masai (@masa_gogo) February 18, 2016
全体的に怖かったのですが、唯一笑ってしまったのが石橋蓮司の女装姿・・・なんかいやいや感が半端ないです(笑)
@satsukiyamai @youchan_togoru 悪霊島での岩下志麻キ○ガイっぷりも大概ですが、あの映画ではさらに石橋蓮司の女装とゆー追い打ちもあります。 pic.twitter.com/d27aDghepz
— こばぶ〜🐾KOBABOO (@kobaboo2001) June 2, 2014
あと冒頭で、ビートルズの楽曲が使われたと書きましたが、これは1980年代にTV放送された時と当時に発売されたビデオソフトでしか聴けません。楽曲の使用権が切れたためです。それからしばらくは、全く別の曲で似ても似つかぬ変な曲が流れたときに見てしまっていたので、しばらく敬遠してました。
以前にマゾンプライムで見ましたが、カバー曲が使用されていました。かなり曲調も似ており、エンディングに流れた「Let It Be」は結構良かったです。