今回は森村誠一の「証明シリーズ」のひとつ、「人間の証明」を紹介していきます。
ニューヨークからやってきた黒人青年がホテルのエレベーター内で殺される。誰が殺したのか?そして日本に来た目的は?
戦争によって悲しい過去を背負った登場人物たちの人間模様を描いた作品です。
「人間の証明」作品紹介
監督: 佐藤純彌
脚本: 松山善三
製作: 角川春樹 / 吉田達 / サイモン・ツェー
出演者: 松田優作 / 岡田茉莉子 / ジョージ・ケネディ
音楽 :大野雄二
主題歌 :ジョー山中「人間の証明のテーマ」
製作会社 :角川春樹事務所
配給 :東映洋画
公開 :1977年10月8日
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「人間の証明」あらすじとネタバレ
ニューヨーク、黒人男性ジョニー・ヘイワードは、銀行で金を下ろし、今まで住んでいたスラム街のアパートを引き払う。
「どこに行くんだい」と管理人に言われたジョニーは「キスミー」という言葉を残して日本に向かう。
日本では、ロイヤルホテルの42階で八杉恭子のファッションショーが開かれていた。
エレベーターがその階につくと中の乗客が次々と降りていく。しかし1人の男が降りようとはしなかった
彼の胸にはナイフが刺さっており、死ぬ間際に「ストーハー」とエレベーターガールに言って死んだ。その男がヘイワードだった。
警察は外の公園で麦わら帽子を発見する。
棟居刑事が「ストーハーとは、ストローハット、つまり麦わら帽子のことではないか」と推測する。
ワイドショーでその事件を報道中にジョニー・ヘイワードを見かけたとの通報がはいる。
通報した人物はジョニー・ヘイワードがまるで酔っ払っているかのようにフラフラしていたこと、そしてその3分ほど前に女性が公園から出てきて、白いクラウンに乗って去っていったことを警察に伝えた。
同じ日に八杉恭子の息子、恭平がある女性をはねて死なせてしまう。恭平はその女性を海に捨てる。
八杉恭子は恭平から人を殺したことを告白される。自首するという恭平を止め、ニューヨークに逃がす恭子。
遺留品
警察はジョニー・ヘイワードが「西條八十詩集」と、麦わら帽子をアメリカから持ってきたこと、そしてその麦わら帽子は昭和20年代前半に作られたであろうこと、そしてもう一つの遺留品「西條八十詩集」も昭和22年に発行されたことを突き止める。
一方ニューヨークのシェフタン刑事はインターポールからジョニー・ヘイワードの捜査協力を頼まれていた。
シェフタン刑事の調べにより、ジョニーヘイワードの父親。ウィルシャー・ヘイワードがお金持ちの車にわざとぶつかって6000ドルを搾取。それを息子にやり、日本に来させた事がわかった。
父親は入院していたが、息子が殺されたあと、消息不明になっていた
そしてウィルシャー・ヘイワードは進駐軍として、昭和21年から昭和24年まで日本にいたこともわかった。
これによりジョニー・ヘイワードの母親は日本人なのではないかとの仮説を立てる。
警察は「西條八十詩集」の中にあった文面
「母さん・・僕のあの帽子どうしたんでしょうね 。ええ、夏、碓氷から霧積へ行く道で谷底へ落としたあの麦わら帽子ですよ。母さん、あれは好きな帽子でしたよ。」
そこから「キスミー」は霧積ではないかとの見解を示す。
霧積へ
棟居刑事と相棒の横渡刑事は霧積に行き、ウィルシャー・ヘイワードを知っているかもしれない老婆に会いにいくが、何者かに殺されてしまっていた。
その老婆は昔、進駐軍相手にバーをやっていたそうで、その従業員の1人が八杉恭子だった。
これにより、八杉恭子が実の息子であるジョニー・ヘイワードを殺したという疑惑が浮かびあがる。棟居は八杉恭子に問い詰めてるが、否定されてしまう。
棟居と八杉恭子には因縁があった。
バーの従業員だった八杉恭子が、駐留軍の兵士達に、犯されそうになった際、助けようとした男がいた。その男がリンチにあっている間に八杉恭子はどこかへ逃げてしまう。
その男はその二日後に死亡し、その息子が棟居だった。
棟居は父親を置き去りにした八杉恭子を恨んでいたが、刑事の本分は忘れずに捜査することになる。
アメリカへの憎しみ
アメリカに渡った棟居はシェフタン刑事と共にジョニー親子の情報を集めることになる。
シェフタンももともと駐留軍にいた。それを知った棟居は複雑な気持ちで行動をともにする。
棟居とシェフタンが恭平を見つけ、投降するように促すが、恭平が銃を出したため、シェフタンは彼を撃ち、恭平は死亡する。
棟居はアメリカ人であるシェフタンに向かって「日本人を何人殺したら気がすむんだ!」と言い放つ。
真実
日本デザイン大賞受賞式の日、棟居は八杉恭子に息子が死んだことを告げる。
見事大賞を受賞した恭子はスピーチの場で、犯人は自分だということを警察関係者にだけわかるようなスピーチをする。
そして恭子は車を飛ばして霧積に向かい、棟居と横渡はそのあとを追った。
車内で棟居は相棒の横渡から、八杉恭子は棟居の父親を置き去りにしたのではなく、警官を呼びに行っていた。しかし警官も役に立たず、結局、八杉恭子はその後アメリカ兵たちに犯されてしまったという話を聞かされる。
そして生まれたのがジョニーヘイワードだった。彼女にとってジョニーヘイワードは息子ではあるが、国会議員の夫を持ち、恭平を愛していた恭子にとって、公にできない人間だった。
霧積の山にある谷にて、崖に立っている恭子にジョニー・ヘイワードと老婆の殺人を認めさせた横渡が逮捕しようとしたが、棟居が止めた。
恭子は麦わら帽子を谷底へ投げ、自らも谷底へ落ちていった。
ニューヨークではシェフタンがジョニーヘイワードの遺品を父親に届けるが、その父親はすでに死んでいた。
その帰り道、黒人青年に「日本びいきめ」と言われながらナイフで刺されてシェフタンは死亡する。
「人間の証明」感想
原作では「棟居刑事シリーズ」ということで、棟居扮する松田優作さんを中心に話が進んでいきます。公務として動いていながら、恭子に対しては父親を殺されたという恨み、そしてシェフタンに対しては直接殺した駐留軍のマークを見た時以降の接し方など、上手く表現されていて「さすが!」と思ってしまいました。
特に日本に帰る前、鏡に映ったシェフタンに拳銃を向け、発射するシーン。
いつもの松田優作さんの映画なら、全く無表情で冷たい感じの印象ですが、複雑な心境を宿しての表情は凄く印象に残りました。
ジョニー・ヘイワード役のジョー山中さんの歌が「西條八十詩集」の英訳だと、映画を見て知りました。歌は子供のころから知っていて、「母さん、ぼくのあの帽子、どうしたでしょうね」のフレーズも知っていたのに・・・
「いい歌だな~」と思っていただけで歌詞は英語だったのでなんとなくで聞いていたからですね。
最後に豆知識をひとつ。
原作は森村誠一ですが脚本は松山善三さんということで少し脚色されています。
ラストシーンでは何もしゃべらない棟居刑事なのですが、実際には松田さんの要望でセリフがあったそうです。監督もそれを了承しましたが、結局監督の判断でセリフはカットされました。しかしそのセリフを言った後の松田さんの表情が良かったため、そこだけ使ったそうです。