ブラック・ジャックOVA カルテ10 「しずむ女」あらすじと配信情報

TVアニメ(国内)

今回は「しずむ女」を紹介します。

 

足が不自由な少女のBJへの淡い恋心。その純粋な思いに涙してしまうお話です。

 

「しずむ女」あらすじ

 

豊かな漁場として知られる三ヶ月湾。

しかしその湾へと流れ込む満月川付近に誘致された工場群から、重金属系有害物質が工場廃液となって流れ出してしまい三ヶ月湾は汚染されてしまう。汚染されたことを知らずに人々はその湾で捕れた魚を食べ続け、手足の関節に激痛が走り、いずれは動かなくなるという「三ヶ月病」と呼ばれる公害病が発生してしまう。

その海のそばで暮らしていた少女・月子も「三ヶ月病」にかかっており、いつも杖をついて歩いていた。月子は素潜りが得意で、毎日のように三ヶ月湾に潜り、取れた魚を売って歩く生活をしていた。しかし魚を買ってくれる家はほとんどいなかった。

BJは三ヶ月病救済委員会の総括であり医師でもあるフォックスと、公害病の元凶となった工場のDLケミカルの社員で、三ヶ月病救済委員を兼任している杉田と会うことになる。

いままで三ヶ月病の手術は何例も行われていたが、歩けるようになった者は皆無だった。フォックスはそのために全国の優秀な医師と連絡を取り、三ヶ月病救済委員会の医師グループに入ってくれるように勧誘していた。

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月子との出会い

BJは即答せず、現状を見たいと言って、とりあえず三ヶ月湾にやってくる。そしてその地の山奥にある満月館に泊まることにする。

公害病が問題になったことで悪い意味で知名度が上がり、その満月館を訪れるものは少なく、顔はいかついが、根は優しくひょうきんな性格の主人が1人で切り盛りしていた。

その満月館に月子が魚を持ってやってくる。主人は「売れ残ったんか?わざわざここまで来て大変だったな」と優しく言って数匹の魚を1000円で買い取る。嬉しそうな月子。

出典:手塚治虫OFFICIAL

主人は月子が帰ったあとに買った魚を土に埋めていた。

親もいない、身寄りもない月子は一人で生活していた。魚を採ることしかできない月子を不憫に思って主人や浜の人たちが魚を買ってやるのだが、三ヶ月湾の魚を食べてはいけない事になっていたため、皆は月子が帰ったあとに土に埋めていたのだった。

しかし最近は浜の人たちが買ってくれなくなり、主人は3日おきに浜から山奥まで不自由な足を引きずりながらやってくる月子が心配になっていた。

月子は帰り際に見送ってくれた主人たちの中で見たBJに一目惚れする。階段をおりていた月子が踏み外して転げ落ちる。

外傷は無かったがBJは月子の膝を触りながら「いつから悪いんだ?」と聞く。すると月子は「先生、青真珠好きか?」と帰ってくる」そして月子はまた浜に帰っていった。

出典:手塚治虫OFFICIAL

月子が言っていた青真珠とは、三ヶ月湾に昔からある伝説のような言い伝えで、三ヶ月湾で採れた青真珠をもらった男は、採ってきた女と結婚しなくてはならない・・・と言うものだった。その話を主人から聞かされたBJ。そばにいたピノコは驚いて嫉妬する。

主人は「安心してください。今じゃ採れっこねえし、ありっこねえ」と笑った。

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明かされる正体

フォックスがいる県立第三病院に優秀な医師たちは集められた。BJは医師グループのミーティングに参加する。その最中に三ヶ月病の少女が心停止寸前の状況になる。BJは急遽オペに参加し、なんとか成功させる。

もともとフォックスはBJを間黒男(はざまくろお)と名乗らせていた。無免許医の立場で救済委員会に入ることができなかったからである。しかし手術が終わった時に他の医師に素性がバレてしまう。

その医師がDLケミカルにそのことを知らせたため、社長から「善処せよ」と言われた社員の杉田はフォックスとBJに伝えて陳謝する。

BJは素直に了承し「自分のやり方でやる」と言って立ち去ろうとする。申し訳ない思いの杉田は会社に返さねばならないもともとの契約金(数千万円)が入った鞄を差し出し「受け取ってください」と頭を下げる。しかしBJは少女のオペ代として200万だけ受取り、帰っていった。

再会

満月館から病院に行ったタクシー運転手と再会したBJ。満月館に帰る途中、海岸でつらそうに座り込んでいる月子を見つける。

出典:手塚治虫OFFICIAL

月子は前日よりも足が動かなくなっていたが、それでも魚を売りに行こうとしていた。BJはタクシーに乗せ、タクシーは月子の案内で何度も停車、そのたびにBJが月子をおんぶして、月子は「魚、いらんかね〜」と各家を廻った。

しかしやはり魚は売れなかった。夜になっても「魚いらんかね〜」と大きな声で泣きながら叫ぶも結果は一緒だった。そんな月子を見て涙ぐむタクシー運転手。

月子は洞窟で住んでいた。ペットボトルのお茶を出して「粗茶ですが」と痛いであろう膝をついて丁寧に出す仕草に少し愛おしさを感じるBJ。

 

そこで急に膝の痛みを訴えたため、タクシーに乗せて大至急、満月館に急行する。BJは手術用にと1部屋を借り、フォックスに人工関節の予備を分けてくれないかと願い出る。フォックスと杉田の協力もあり、人工関節以外の手術に必要な道具を用意してもらったBJは早速手術を始める。

月子の手術は成功する。しかし問題は残っていた。三ヶ月病の患者の中には腹痛を訴える者が多くいた。BJは「腹痛がおきたらちゃんと言うんだよ」と月子に言う。

月子は膝の抜糸に一週間、その後にリハビリする計画となっていた。そんな月子は「治ったら海に戻れる?私、青真珠採ってきて先生のお嫁さんになる」と言って笑っていた。

月子の素性

BJは市役所に行き、なぜ月子に被害者認定カードが支給されないのかを女性職員に尋ねる。認定されなかれば医療費は自己負担で、賠償金ももらえない。今後も治療が必要な月子には絶対必要なものだった。

その女性職員も以前から月子の事を知っていた。そして同じように認定カードを発行しようとした。

月子のもとに何度も足を運び、彼女と話したが、月子の本名が分からず、本籍、誕生日も分からず(知的障害の可能性?)、正式な診断書も書けなかったため、役所がそれを認めなかったため認定カードを発行することが出来なかった事を悔しそうに話す。

理由がわかったBJは立ち去り際に女性職員に礼をいう。「ありがとう。ここにも月子の味方がいてくれた。」と・・・

 

付近の学校や養母施設へも連絡してみたが、結局月子の素性はわからなかった。

青真珠

月子のリハビリが満月館で始まって数日たった頃、BJはDLケミカルを訪れる。

その頃、寝ているピノコの隣で横になっていた月子はお腹を抑える。明らかに痛みがあったが「先生、月子のお腹は痛くないよ」と満月を見ながら独り言をいっていた。

BJは倉庫にて常務と話をする。BJはDLケミカルが雇った医師の中に無免許医がいた事を自ら告発することを条件に、月子への賠償金として3000万円を要求する。

小切手を受けとったBJはすぐに満月館へと戻る。しかしほとんど歩けないはずの月子がいなくなっており、「あおしんじゅ とってくる」と書かれた紙だけが残されていた。

BJや満月館の主人、ピノコらが海岸で月子を探すも、見つけることはできなかった。

 

 

5日後、水深5メートルの海中で月子は見つかった・・・

 

司法解剖にて、月子が痛みを覚えていた十二指腸の部分から青真珠がみつかる。BJはこれを受取り、三ヶ月病の原因究明に当たることを決意する。

 

「しずむ女」感想

 

切なさ全開のお話で、私的にベスト3に入るエピソードです。純粋無垢な月子と優しい主人。認定カードを発行しようと上司に楯突く職員など、周りには支援してくれていた人がたくさんいたのに結局は亡くなってしまいます。人生は非情ですね。

 

このお話は原作はあります。しかし未収録になっている書籍もあるようです。その理由はあとで上げるとして、大まかなあらすじ(原作)を紹介します。

原作のあらすじ

公害を引き起こした会社側が責任を認め、晦日市病にかかった人を無償で直すことを約束した。

そんな中、あるボロボロの家の少女にそのことを告げようとするも…

「ヌ?」

と少女は返すばかりで、なかなか話が進まない。

知的障害をだと思った役人は、この少女に補償金を渡す価値はないと判断し、母子寮に寄付する契約書にサインさせた。

しかし少女はテキトーに悪戯書きしただけで、とても読める字は書けはしなかった。

役人は厄介払いとばかりに契約書をひったくると、そのまま帰っていった。

一方病院では、ある医者がBJを呼び、患者の治療の指導をさせようとしたが、会社の社長に断られる。

病院を出たBJは、乳母車のような車椅子に乗る少女に出会う。パン屋からパンを貰い、家に帰ろうとした少女を見たBJは、家に帰る手助けをする。

助けてもらったお礼なのか、少女からパンを貰うも、そのパンはすでに腐っていた。

怒ったBJはパン屋を問い詰めたところ、既に店晒しになっていたものであることを謝罪。

あの少女の名前はヨーコといい、水に潜って魚をとるのが上手かったが、晦日市病に侵されてしまったと明かす。

晦日市病なら無償で直せるはずだと思ったBJは役所に問いあわせたところ、ヨーコに渡す補償金はすでになく、母子寮に寄付したと役人に告げられる。

役所からも見捨てられてしまったヨーコを不憫に思いながらも家を去ろうとしたとき、

「オニイチャン」

ヨーコが初めて言葉をしゃべったのだった。

暫くしたとき、ある人々がヨーコの家に入って、ヨーコを連れていこうとした。

嫌がるヨーコにある人が「きみを手術してなおしてあげるって人がまってるよ」と告げた。

連れて行った先の病院で待っていたのは、BJだった。

大病院では利用してもらえないので、町の病院で手術することにしたのだ。

手術が終わった後、BJは役所に再度かけあう。

BJは晦日市病が脳までも侵すことを役員に話し、治療費を要求するも、

役人側は、ヨーコの脳障害は元からだったとしてそれを拒否する。

「もとはふつうの頭だった!!」

「先生、ヨーコは字もかけないのですよ」

「字がかけたらどうする?」

「そしたら信じましょう。治療費も出そうじゃないですか!」

こうして条件付きでの約束を交わしたBJは、ヨーコのリハビリを始めるのだった。

段々と歩けるようになるも、肝心の知能の方は回復する兆しを見せなかった。

それに悩まされながらも、BJはヨーコのリハビリを続けていった。

ある日、BJが病室に行くと、ヨーコの姿はなかった。

どこに行ったのか探していると、床に一枚の紙切れが置いてあった。

オサカナ トッテキマス センセイニ タベサセテ アゲマス

ヨーコは字を書けるようになったのだ。

だがそのヨーコが病院には見当たらない。

パン屋にどこに行ったか聞いてみると、ヨーコは海の方へ行ってしまっていた。

まだ足は完全に治っていない、この状態で泳ぐなど無理だ。

BJは急いで港に向かった。

そこで見たものは、水面に浮く、ヨーコの水死体だった。

「……ヨーコ、こんど生まれたらきれいな海で泳げよ……」

そう言ってBJは、ヨーコの書いた紙切れを破り捨てるのだった…

このお話は文庫本や漫画全集には収録されていません。その理由としては「障害者に対するあまりにもぞんざいな扱い」と「修正不可能なほどの差別用語の多さ」だったからだそうです。

いくら言葉が通じない、字が書けないからと言って、役人が見捨て、契約書にサインさせるというのはあまりにもひどい扱いです。

後者の「差別用語の多さ」について、ここではその差別用語を使われていませんが、実際には至るところにその差別用語が使われていたそうで。

結果として、これは文庫版・漫画全集には載せられないと判断されてしまったようです。しかし今回のOVA版は優しい主人や浜の人たち、市役所職員、DLケミカルの社員たちの温情が感じられる作品となっています。

悲しい終わり方ですが、原作よりはまだ救いがありますね。

 

「しずむ女」動画配信情報(2022年7月9日時点)

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