今回は「人面瘡」を紹介します。
どんな名医でも助けられないのは人間の心の奥・・・・そんなことを考えてしまうお話です。
カルテ9「人面瘡」あらすじ
ここ一年の間に都内全域で高級車ばかりを壊す悪質ないたずら?が続いていた。麻薬捜査から少年課に配置換えになっていた高杉警部は、監視カメラに写っているその犯人が少年だと知り、捜査を開始する。
その少年は雨の日に現れ、黄色い傘をいつもさしていた。
奇妙なデキモノ
BJは依頼を受けて都築耕一郎の屋敷に赴く。彼は銀行、車、エレクトロニクスなどを取り扱う総合商社、都築財閥の社長であった。
その耕一郎の腹には巨大な顔のようなデキモノができていた。そしてそれは「人面瘡」と呼ばれており、少なからず症例は存在した。
出典:手塚治虫OFFICIAL
そのデキモノによっての痛みなどは無かったが、何度切り取っても同じデキモノができることで患者は精神的に病んでいき、錯乱を起こしたり自殺したりする者が多くいた。
今期間限定でブラック・ジャックのOVAがYouTubeで配信してるけど、子供の頃漫画読んでたやつは人面瘡の回は必ず見とけよな! pic.twitter.com/MVcgyCfbFy
— Money@ボドゲ (@hpukuamo) November 9, 2019
耕一郎の屋敷の地下には医療設備が整っていたため、そこで診察・治療を行うことになった。
奇妙な一致
同じ頃、鑑識班に呼ばれる高杉警部。
車を壊した斧に付いていた14歳の少年の指紋と、2年前から起きていた別の事件で、男を何人もラブホテルに連れ込み殺害するという事件の犯人とされている女殺人鬼(推定27歳)の指紋が一致したとの報告を高杉警部が受けるが、信じられるわけがなかった。
耕一郎は6歳の頃に小さなおできのようなものができたことから話しだし、8歳の頃には今の顔になったと告白する。そしてその人面瘡は「私を信じればいい・・・」と話しかけてきたと話す。
耕一郎は「日々、地獄のような戦いですよ」と言い、「どんな地獄だ?」と聞くと、「そのうちわかりますよ」と言って寝室に向かっていった。
耕一郎は毎日、ベッドに太いベルトでくくりつけられた状態で眠っていた。毎日ではなかったが耕一郎は発作を起こすとベルトを引きちぎり、2,3日行方をくらますことがあった。
その日の夜もそばに付いていた執事の種田に謝ったあとに発作が起き、ベルトを引き裂いて何処かへ行ってしまう。
BJとピノコは耕一郎を探すために種田が運転する車に乗り込んだ。耕一郎の奇妙な行動は10歳の頃から始まっており、その頃は種田が耕一郎を探し出し保護していた。
探している最中に高杉警部と出会う。高杉はBJたちを呑みに誘ったものの、呑んだのは高杉一人で、ベロベロになってしまう。そんな時にラブホテルで男が殺されたとの連絡が携帯に入ってくる。
柳子という女
事件の詳細はこうである。
20代後半の赤毛の女が雨の中、黄色い傘をさして立っていた。その柳子と名乗り、男に近づいた。そして軽く呑んだあとに男をラブホテルへと誘い、そこでめった刺しにして殺害していた。
高杉警部を事件現場のラブホテルに送ったBJたち。BJは種田とピノコを屋敷に帰らせて自分で探そうとする。その時の種田の様子がおかしいことに気がついたBJだったが、種田がシラをきったため、それ以上は追求しなかった。
1時間ほど歩いた時に、ホームレス生活を送る少女マリーに声をかけられる。「薬持ってる?」と言われ、麻薬だと勘違いしたBJ。しかし話を聞くと実際に怪我をした女性を匿っているから手当てしようとしていることがわかる。
マリーのテントには柳子がおり、手のひらから出血していた。犯人だとは知らないBJがその手を見ると、人面瘡があり、それがまるで本物のように動いていた。驚いたBJから逃げ去る柳子。
屋敷に帰ってきたBJは種田から、耕一郎が帰ってきたことを知らされる。BJは診察しようとするも頑なにそれをさせまいとする種田。強引に耕一郎の寝室に行くと、そこにいたのは柳子だった。
「これが耕一郎か?」と言うBJに柳子は「あんないくじなしと一緒にするな」と言って笑いだした。その柳子の身体中に多くの人面瘡ができており、それが一斉に笑いだした。苦しみだした柳子は毛布をかぶり、おとなしくなる。BJが毛布を取ると、そこには耕一郎が疲れきったように眠っていた・・・
柳子によってテントを壊されたマリーは街をふらついていた。そこで高杉警部に見つかってしまう。マリーはその昔、悪さをして少年院送りになりそうな時に高杉警部の温情により、それを免れていた。
マリーから柳子とBJのことを聞きつけた高杉警部が耕一郎の屋敷にやって来る。しかしBJは「すぐに見失った」と嘘をつく。
多重人格
BJは催眠術で耕一郎に質問する。耕一郎は柳子のことを美しい人だと認識していた。その質問の最中にもう一人の人格である少年ジュンが現れる。
出典:手塚治虫OFFICIAL
すぐに我に返る耕一郎・・・
耕一郎は解離性同一性障害(多重人格)の症状だと判断したBJは手術することを決断する。その前に種田から昔の事を聞こうとする。人面瘡ができたのは多重人格になったのが原因だと思い、そうなったきっかけが知りたかった。
原因
耕一郎は幼い頃から父親によって英才教育を叩き込まれていた。その日常は耕一郎にとっては苦痛であり地獄でしかなかった。そんな日常でのただ唯一の安らぎはは優しい母親と過ごす時だけだった。
着物を着て、黄色い傘をいつも持っていたその優しい母親は耕一郎にとって、美しく清らかで特別な存在だった。
そんな母親は父親が愛人と再婚したことで、強制的に離縁させられて耕一郎とも離されてしまう。そして1年後にはあまりの寂しさが原因で精神的に病んでいき、自殺する。
そのころから父親に対して憎悪を抱くようになり、人面瘡ができたのもこの頃だった。
別人格のジュンが高級車を壊したのは、金持ちであるがゆえに母親を捨てた父親への歪んだ憎しみのはけ口として。そして柳子が殺したのは、妻や子供がいるのに浮気しようとした男ばかりだった。
結末
BJが夜明けに手術すると決めたころ、高杉警部から電話が入る。
警察は高級車を壊していた少年ジュンと女殺人鬼の柳子の指紋が都築耕一郎の指紋と一緒であることを見つけ、夜明けと同時に耕一郎を逮捕することを決定していた。
高杉警部は無免許医のBJに「夜明けまでに逃げろ、その屋敷に捜査が入る。これは呑みに付き合ってくれた礼だ」と言って電話を切る。
夜明けを迎えた頃に手術が始まるが、人面瘡が動き回って上手くオペできなかった。そんな時に警察が逮捕状を持って耕一郎の屋敷にやってくる。
ブラックジャックで「人面瘡」っていう顔がボコボコになるエピソードがあったゾ。 pic.twitter.com/EtnsSe7igX
— ペッティングパパ@バッタ (@hibiki_critic) May 12, 2016
出典:手塚治虫OFFICIAL
同じ頃、耕一郎の人格がジュンに変わり、手術室から飛び出してしまう。種田が警察の人間と押し問答をしている時にナイフを持ったジュンが現れる。
ジュンが襲いかかろうとし、一人がジュンに発砲する。
BJが駆けつけたときには耕一郎に戻っていた。そしてなんとか助けようと緊急手術を行うも、耕一郎が助かることはなかった。
「人面瘡」感想
今回も前回同様、手術を成功させることはできませんでした。前回は大木の精、今回は人面瘡(多重人格)です。最後にBJは「どんなに厄介な腫瘍を切れても、人間の心の奥を切ることはできない」と言って物語は終わります。
原作でもそうですが、BJが手術して、せっかく助かったのに交通事故で死んだり、カルテ3のように死を覚悟でダイナマイトで死ぬ軍人がいたりと、手塚治虫は医療行為が無駄になる事例を多く書いています。
それは人間の浅はかな自己満足であり、絶対的な完治なんてこの世には必要ない、寿命があるのだから・・・と警告しているかのようでした。
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