今回はカルテ3「マリア達の勲章」を紹介します。
自国の独立に身を捧げた軍人と、その兵士たちの戦いを中心に物語が進んでいきます。
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「マリア達の勲章」あらすじ(ネタバレあり)
ある日、南米の小国オルテガ共和国に対してユナイツ連邦が爆撃を加える。目的はオルテガ共和国大統領、クルーズ将軍の拘束であった。
ユナイツ連邦のケリー大統領は記者会見で、麻薬栽培と密輸の罪でクルーズ将軍を拘束したと発表する。
出会い
BJはユナイツ連邦の国境付近に呼ばれ、そこで1人の綺麗な女性に出会う。彼女は手術費用50万ドルを持っており、自らをマリアと名乗った。
「患者はどこだ?」と聞くBJにマリアは「今は旅行中です。一週間後に指定のホテルで待機していてください」と言ってその日は別れた。
刑務所に収監されていたクルーズ将軍が、取り調べを受けるために検察局に行くことになる。その護送車がクルーズ将軍の部下たちに襲われる。その中にはマリアの姿もあった。
出典:手塚治虫OFFICIAL
クルーズ将軍は奪回したが、マリアは敵の攻撃で左目に被弾してしまう。
約束の一週間後、なかなかやって来ないマリアを待つことを諦めたその時、息せき切ったマリアがやってくる。BJはマリアの傷ついた目を見て「どうしたんだ、その目?」と言うと同時にマリアは疲れ切って倒れてしまう。
「いいんです。私よりも先生を必要としている人がいるんです!」と言って、彼女は気を失ってしまう。
燃えたぎる情熱
彼女の左目は角膜を損傷しており、移植をしないと失明するほどの大怪我だった。BJは鎮痛剤を処方し、その後、気がついたマリアに「もう少し休んだほうがいい、かなりの激痛のはずだ」と言う。
「もっとひどい拷問にだって耐えたことがあるわ」と言ってマリアは上半身の衣服をすべて脱ぎ去り、胸や背中に刻まれた無数の傷をBJに見せるのだった。
「服を着ろ!」と言うBJに「だめ、ちゃんと見てほしいんです!私達を理解してもらうために。私達が大国を相手にどう戦い、独立を勝ち取ったのか。この傷は私の軍人としての勲章なんです!」と言うマリア。
ジャングルの中にあるオルテガ軍の宿営地に案内されたBJはすでに末期がんと診断を受けていたクルーズ将軍と会い、とりあえず診察をする。その後、今回の作戦指揮を執ったエステファン大佐を紹介される。
マリアとエステファン大佐は、クルーズ将軍が祖国に帰れるまでの延命治療を望んでいた。
エステファン大佐から「クルーズ将軍を祖国に帰したい」と言われるものの、BJは「輸送するのは患者の体力を消耗する」として反対する。
その夜、マリアは湖で体をきれいにして、BJのテントを訪れる。そこで裸になるマリアに出ていくように言うBJ。「私は先生の護衛ですから、それともこのまま外で肺炎になってもいいのですか?」と言って布団に入ってくる。
そこでマリアはクルーズ将軍が麻薬栽培をしていないこと、ユナイツ連邦の本当の目的は石油の利権だということ、そして自分自身がいつ死んでもいいように常に精一杯生きると決めていることをBJに伝える。
「クルーズ将軍のこと、信じてくれますか?」というマリアにBJは「いいや・・・でも君の事は信じられる」と言い、その言葉にマリアは喜ぶ。BJはマリアに手を触れること無く、そのまま夜が明ける。
BJが目を覚ますと、そこにマリアの愛用している銃が置いてあり「これは私の分身です。いざという時のために使ってください。愛をこめて・・・マリア」と書かれた紙も置いてあった。
手術
どうしてもクルーズ将軍を捕まえたいケリー大統領は、特殊部隊「ブルージャケッツ」によるオルテガ軍掃討作戦を決行する。そしてクルーズ将軍以外の部下は全員射殺するようにとの命令を下す。
宿営地にやってきた特殊部隊によって多くに兵士がやられていく。そこからなんとか逃げ出すことができたのはBJ,マリア、クルーズ、エステファン以下十数名の兵士のみであった。
痛みが何度も起き、幻覚を見るようになっていたクルーズ将軍をどうしても祖国に帰したいという皆の熱い願いを聞き、BJは甲状腺の病巣だけでも取り除けば・・・と考える。
設備もない、月明かりしかない場所での手術を決めたBJにマリアは輸血用の血液の提供を申し出る。
「クルーズ将軍は私の父なんです」というマリアにBJは少し笑った。「そんなにおかしい、私が娘だなんて」と言うマリアに「そうじゃない。ツイてる!」と困難な手術を前にBJは少し高揚していた。
病巣を取り去り手術が終わりに近づいた頃、特殊部隊が近づいてくることを知ったエステファン大佐はクルーズ、マリアたちに敬礼、「すべての幸運を、マリア、君に」と言って、特殊部隊を反対側に誘導するためにその場から離れていった。
ユナイツ連邦では、クルーズ将軍に似せて整形させた重度の麻薬中毒者を裁判に出廷させることを決める。これによりクルーズ将軍に対しても抹殺命令が下ることになる。
燃え尽きる情熱
エステファン大佐が部下たちに「もし生き残ったらカメール村の教会で落ち合おう」と言って部隊を散開させる。エステファン大佐は部下たちがオルテガに行けるように時間稼ぎのためにその場にとどまる。しかしやってくる特殊部隊に叶うわけもなく、多数の銃弾を身体に受けて絶命する。
手術が終わり、車で国境に向かうことになったBJたち。マリアは「昨日の夜、なんで私を抱いてくれなかったの?」とBJに聞くマリア。
BJ「昨日のことは憶えてない」
マリア「5年、いや10年、あるいは生まれた時からのすべての憎悪を忘れてなるものかと・・・あなたはそれを背負っているように見えます。そんな先生が憶えてない?」
BJ「だから、楽しかったことは昨日のことでも憶えていられないんだ」
マリア「楽しかった・・本当に!? 一晩中手も触れずただ横にいた私といて楽しかった?まだ脈はあるってこと?」
BJが何も言わずに微笑み、マリアはとても嬉しそうに、何度も問いかけるように、喋っていた・・・・
そこにやってくる特殊部隊のヘリ2機。
眠っていたクルーズ将軍はヘリの音で目を覚まし、震える手でマリアの腕をつかむ。「銃を渡せ・・・」クルーズ将軍はBJに身体を押さえつけられながらも「撃て!」と独り言のように叫ぶ。
マリアはそれに「はい!将軍」と答え、車を停める。ロケット砲を持って出て行くマリアを制止するBJだったが、マリアは最初のヘリに一発おみまいしてそのヘリを撃墜する。
そして2機目のヘリからは機関銃がマリアに向かって発射される。それと同じくしてマリアのロケット砲もそのヘリに向かっていった。2機目のヘリも撃墜するマリア・・・・
しかしマリアの胸にも機関銃の弾が数発撃ち込まれていた。
マリアは死に際に「カメール村の教会へ・・・・そこでみんなと落ち合うの・・・」
マリアは抱きかかえられた状態でBJの頬に顔を近づけるが、しかし力尽きる。
車が動かなくなったため、BJはクルーズ将軍をおぶって歩き出した。
国境付近にたどりついた頃にはすっかり朝になっていた。
国境の手前にはユナイツ連邦の人間が数人おり、ケリー大統領特別補佐官のサム・バリンジャー・ジュニアは「クルーズ将軍を渡していただきたい」とBJに言ってくる。
BJは渡すつもりなどもうとうなかったが、クルーズ将軍は「ありがとう先生。ここでいいよ・・・」と言って1人で前に歩いていく。歩きながら上着を脱ぐクルーズ将軍。彼の身体には包帯とともに大量のダイナマイトが巻きつけてあった。
たじろいで少し離れる補佐官たち。しかしクルーズ将軍が国境にかかるフェンスに手をかけた時、サムの合図で他の者の銃口がクルーズ将軍に向けられる。
BJはマリアの銃をサムの頭部に当て、他の者達に「撃つな!」と叫ぶも、サムが「撃て〜!」と命令する。
クルーズ将軍の身体は粉々になり、フェンスを掴んでいた腕一本だけが燃え残っていた。その光景に唖然とするBJ・・・
出典:手塚治虫OFFICIAL
サムが「撃ちますか?私を撃ってもなんの解決にもなりませんよ。これは国と国の争いごとですから」と微笑みながらBJに言い放つと、カッとなったBJはその場でサムを殴りつける。
約束の地
BJは国境を超え、カメール村の教会にたどり着く。
教会は廃墟の中にポツンと建っているだけで、誰もおらずそれも廃墟同然だった。
そのそばでBJは3日だけ待った。誰も来ないだろうと思いながらも・・・
そして3日目、結局誰も来なかった。
そこで遊んでいた子どもたちが面白がって教会の鐘を鳴らす。同じようにBJもマリアの愛銃を空に向け、弔砲を撃った。
「マリア達の勲章」感想
今回のお話は原作「約束」のリメイクとなっています。
ブラックジャックはアラブの難民キャンプの中にいるルペペという患者を治療に来た。 彼は胸に弾丸が刺さっていて,容易に抜くことは不可能であった。 手術は2回に分けて行うことになり,とりあえず弾が抜けないようにした。
それから1年たち,ブラックジャックの元にルペペから手紙が来る。 パリ警察の中にいるが手術をしてほしいというのだ。 ルペペは死刑が確定しているにもかかわらず手術を依頼していた。 後に銃殺されるが,ブラックジャックが精魂込めて治療した部分には弾を当てるな,というのだった。
原作にはマリアのような女性は出てきていません。前回の「葬列遊戯」がオリジナルストーリーのように、BJを好きになる普通の女性は原作にはあまり出てきません。
TVシリーズは原作に忠実なようですが、OVA版は現代風にテイストを変え、なおかつロマンスなどを取り入れ、原作とは違った雰囲気になっています。これはこれで見やすいと思いますし、TVシリーズのような少しギャグチックなものよりはとっつきやすいのではないでしょうか。
OVAシリーズは全12話ありますが、この「マリア達の勲章」は私の中ではベスト3に入るエピソードでした。
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