今から約30年前、1993年に日本を代表する漫画家、手塚治虫が書いた医療漫画「ブラック・ジャック」の初アニメシリーズ版です。
TV版はほぼ原作通りですが、OVA版は原作を元にして展開されるオリジナルストーリーとなっていて、原作とはひと味違った作画と演出がなされており、やや大人向けの内容となっています。
ブラック・ジャックOVA カルテ1 「流氷、キマイラの男」作品紹介
スタッフ
原作:手塚治虫
脚本:出崎統、山下久仁明 演出:吉村文宏
企画:松谷孝征、清水義裕
作画監督:杉野昭夫
美術監督:岡田和夫、斉藤雅己
撮影監督:高橋宏固
編集:森田清次
音楽:東海林修
音響監督:山田悦司
ミュージックディレクター:鈴木清司
ミュージックプロデューサー:熊田和生
医学監修:永井明
医学協力:竹下俊隆
プロデューサー:久保田稔、宇田川純男
監督:出崎統
キャスト
ブラック・ジャック:大塚明夫
ピノコ:水谷優子
クロスワード:大塚周夫
小百合:井上喜久子
デビッド:大滝進矢
シェル:亀井芳子
ミネア:冬馬由美
フレディ:掛川裕彦
ブラック・ジャックとは何者か?
そもそも題名になっている「ブラック・ジャック」とは何者なのかを簡単に説明します。
出典:手塚治虫OFFICIAL
ブラック・ジャック(本名は間黒男)は正規の医科大学で教育を受け、卒業してインターンになリます。はっきりした説明はないのでおそらく・・・
インターン在籍時に外科部長の決定に反し、病院で勝手に手術を行ったため医師免許が没収され、無免許医となります。
彼は無免許医ながら卓越した技術を持っており、医学界では伝説の天才外科医として有名になります。
難病の患者が現れ、誰にも治せない場合などに病院側から依頼を受け、非合法な手術をして法外な治療代を請求するという、「ドクターX」のようなお話です。
同居人ピノコ
出典:手塚治虫OFFICIAL
ピノコはもともと人間の形ではありませんでした。原作「畸形嚢腫」にて、名家の娘である双子の姉の体のこぶ(奇形腫)の中に脳や手足、内臓等がばらばらに収まった状態で登場します。
しかし心(魂?)は持っており、念力やテレパシーなどで摘出されるのを妨害していました。ブラック・ジャックが「殺さない」と話しかけ、摘出されます。
ブラック・ジャックは各部位をつなぎ合わせて一人の女児を作り上げます。(超能力は畸形嚢腫の時だけ発揮されており、組み立てられた後は能力が消えたと思われる。)それがピノコとなり、その後はブラック・ジャックの助手兼恋人?(ピノコが一方的に想っている)のような関係になります。
「流氷、キマイラの男」配信情報(2022年7月5日時点)
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カルテ1「流氷、キマイラの男」あらすじ
ある大富豪からの依頼を受け、ブラック・ジャック(以後はBJと表記)とピノコはアバロン諸島のラコスキー島に向かった。
その島には城があり、そこに依頼主であり多国籍大企業の会長、クロスワードが他所の土地から移り住んでおり、妻の小百合、秘書官のデビット、その他の使用人たちも住んでいた。
出典:手塚治虫OFFICIAL
おそらくBJに連絡したのは小百合であり、小百合は以前にBJに整形手術をしてもらい、そのおかげで美しく生まれ変わってクロスワードと結婚できたと考えられる。
キマイラ病
クロスワードはキマイラ病という病気を患っていた。多い時には1日に4回から5回発作が起き、全身に激痛が走り、それが始まるとクロスワードは何リットルもの水を飲み続けた。
その水を飲むと痛みが収まるのだが、その後全身から飲んだ水を吹き出してしまうのだった。
ブラック・ジャックすっげえ好きなんだけど「流氷、キマイラの男」のここで毎回ダメなんだ。
止め絵に弱い pic.twitter.com/0emkE4b0qh
— ディメ登呂丼 (@DimetroDOOON) May 11, 2021
その水は巨大なポンプで城内部に組み上げられている島の地下水であり、どこにでもある、ただの水だった。
「今まで80人の医者に診られたが全員がサジを投げた」というクロスワード。その城の地下には最新設備の医療機器が取り揃えてあった。
BJは80人の医師たちが残したカルテにすべて目を通す。治療法は様々だったが、彼らの結論はすべて同じであった。
クロスワードの全身の痛みの原因は不明。しかし発作が起きるごとに身体が衰弱し、いずれは死亡する・・・という結論だった。
BJは治療した時期がすべて安定時に行っていることが気になった。発作している時に胸を開いて調べたいと思ったが、暴れまくるクロスワードの体内を調べられるのかは不安であり、クロスワードが許可するわけがないと思っていた。
小百合の秘密
小百合はデビットと不倫をしていた。(それはもともとが財産目当ての結婚で、しかも年の差婚であったためだったと思われる。)
しかし小百合はクロスワードの子を懐妊したためにデビットと別れることを決意する。
一方のデビットも自分の立場を利用して秘書課の経費を横領しながら不倫を続けていた。しかし小百合にバレた上、別れも切り出されたため焦っていた。
(物語後半で、全て知っていたクロスワードからクビを宣告される)
村人
ある日、城の敷地内で壷を盗み、番犬に噛まれた少年シェルを助けるBJ。シェルは「金を貯めてキマイラ病にかかった父さんのために井戸を掘るんだ」と言って去っていく。
出典:手塚治虫OFFICIAL
島の反対側にある村で井戸で水を汲むシェルを見つける。シェルの家で父親が亡くなり、そこにミネア・F・ロスという島の女医と知り合いになる。
ミネアから、キマイラ病は150年前に大流行した風土病で一時はなくなったが、7年前から村人たちの間で発症し始めたこと、発病から3年〜10年で死亡することを知らされる。そのミネアは兄のフレディと一緒に住んでおり、フレディもキマイラ病と戦っていた。
クロスワードの過去
キマイラ病は60年前に一度復活していた。
クロスワードはBJに、自分がラコスキー島出身であること、10歳の時に家族の中だけでキマイラ病が発生したことを話す。
その時、村人たちはキマイラ病の蔓延を防ぐためにクロスワード以外の家族(父・母・弟・妹)を全員殺して焼き討ちにする。
クロスワードは村人から逃げる途中で井戸に落ち、そのときに大量の水を飲んだため(溺死寸前)に発病寸前だったクロスワードは助かった。
村のの井戸はクロスワードが地下水を大量に吸い上げていたために枯れかかっていた。60年前の事を知る村の長老はクロスワードが家族を惨殺された復讐をするために島に戻ってきたと思っていた。
しかしクロスワード自身は、家族への焼き討ちがキマイラを蔓延させない唯一の方法だったと理解しており、それについて恨んだりはしていなかった。
村人たちはクロスワードがキマイラ病を蔓延させた元凶として忌み嫌い、報復しようと考える。
その夜、小百合がバスルームで転倒し流産の危機に陥るが、BJの緊急処置によってお腹の赤ん坊共々救われる。
最後の発作
翌日、クロスワードは次の発作で自分が死ぬだろうと確信し、そして「発作が起きているその時に胸を開いてキマイラがどう動いているのか診てほしい。あんただって診たいはずだろ!」とBJに進言する。
そんな時、村人たちが60年前と同じことを繰り返さんと城に向かっていた。城に向かう村人たちの中にシェルを見つけたミネアは「行っては駄目!」と言うがシェルは聞く耳を持たずに城に向かっていった。
ミネアはその様子を見ながら独り言で**「どんなに悲しいことがあっても自分を見失っては駄目。頑張らなきゃ駄目・・・フレディだって頑張ったのよ。今朝まで・・・力尽きるまで・・・」**と悲しそうに呟いた。
村人たちが迫る中、一方のクロスワードは手術室に向かう。その日、小百合はまだ安静にしていたためにクロスワードはまだ一度も小百合に会っていなかった。
「そうだ、今日はまだ”あれ”に挨拶をしていなかった。」
「戻りますか?」と言うBJにクロスワードは遠慮し、「おはよう、小百合・・・」と独り言をつぶやいた。
流氷、キマイラの男
くっそ泣ける pic.twitter.com/n8WP9GGugo— フジダイ @光の絵師兼料理人兼園芸師兼リアルクラフター兼自営業 (@fujidai_s) October 20, 2019
手術
村人たちが城内に潜入し、使用人や警備員に暴行、家具などを焼き始める。デビットは会社をやめるつもりだったが、小百合を守ろうとする。しかし村人に頭部を殴打され倒れる。
BJはピノコを助手にして手術を始める。胸を開き大動脈の壁の外装と内装の間にある青白く光るウイルスを発見する。その直後クロスワードは力尽きる。
村人が地下の手術室にたどり着いた時、そこにはクロスワードを抱きかかえたBJが立っていた。
「この人はだれも憎んでいなかった。ただキマイラだけを憎んでいた。自分の死でキマイラの原因がわかるかもしれないと信じていた・・・・」
そして「道を開けろ!」と大声で怒りながら村人たちに言い放つ。
「この人を奥さんが待っている・・・」
とても不謹慎なのは重々承知で萌えてしまったのでメスでブッ刺してください!ほぼ骨と皮・お姫様抱っこ・背中と足を持ち上げる手・浮かぶ細い足…※OVA、KARTE1「流氷,キマイラの男」
BJのOVAって性癖のオンパレードなのでいい加減にして欲しい(見て) pic.twitter.com/ctLHMaKh0Y
— 右乳首 (@nidokureo02) September 13, 2017
カルテ1「流氷、キマイラの男」感想
不倫・焼き討ちなど、子供向けではない少しハードなお話です。このOVAでわかることは、他人から見れば悪人であっても、当の本人は自分の使命感があり、それによって救われる人の少なからずいる。しかし忌み嫌われてしまう。それは主人公のBJしかり、今回のクロスワードしかり。
デビットも結局は身体を張って小百合を守ろうとします。惚れた弱みなのでしょう。あんなに憎たらしく振る舞っていたのに・・・
そしてその逆もまた存在します。このOVAはそんな人間たちのウラとオモテを描いた人間ドラマです。
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