シェイクスピアの戯曲「マクベス」を日本の戦国時代に置き換えた作品。ラストで主人公の三船敏郎さんが無数の矢を浴びるシーンはCGなしの本物を使っており、圧巻の迫力です。
原作の世界観に能の様式美を取り入れ、エキストラ人員とオープンセットは黒澤作品では随一の規模で製作された傑作です。
「蜘蛛巣城」作品紹介
監督:黒澤明
脚本:小国英雄 / 橋本忍 / 菊島隆三 / 黒澤明
製作:黒澤明 / 本木荘二郎
出演者:三船敏郎 / 山田五十鈴 / 千秋実 他
公開:1957年1月15日
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「蜘蛛巣城」あらすじ(ネタバレ有り)
蜘蛛巣城を統治していた都築国春の部下、鷲津武時と三木義明は北の館を治めていた藤巻の謀反から始まった戦に勝利し、喜び勇んで主君のもとへ馬を走らせていた。
その帰途の途中の森のなかで、糸車を回しながらなにやら唄っている怪しげな老婆を見つける。
『蜘蛛巣城』のモノノケの老婆。
いま放送してる連続テレビ小説『おちょやん』で
杉咲花さん演じる主人公のモデルとなった浪花千栄子さんが演じてます。 pic.twitter.com/WX3LaF0QHM— マツモトユウジ Yuji Matsumoto ゆうじウンチ (@yuji_unchi) April 21, 2021
その老婆は未来が見えるといい、「鷲津はまもなく北の館の大将になり、後に蜘蛛巣城の城主になる」という。
さらに「三木は一の砦の大将になり、その息子はやがて蜘蛛巣城の城主になる」という。
そして老婆は立ち上がり、風とともに消えてしまう。
その後、道に迷いながらもやっと蜘蛛巣城にもどった2人。
それぞれ剣を褒美でもらい、老婆の言ったとおり鷲津には北の館、三木には一の砦が与えられる。
鷲津の妻・浅芽は老婆の話を信じ、城主の都築を殺してその跡を継ぐように鷲津をけしかける。
迷っていた鷲津だったが、都築が北の館に泊まりに来ていたときに、浅芽が眠り薬が入った酒を護衛にふるまう。
護衛が寝ている間に浅芽は鷲津に槍を持たせる。覚悟を決めた鷲津は都築を殺害。その罪を護衛に押し付け、その護衛を自らの手で殺す。
都筑の息子・国丸と臣下の小田倉則保も討とうと鷲津は追いかけるが、則保たちは三木が仮で常駐していた蜘蛛巣城の門前へたどり着く。鷲津たちは追いつくが、そこでは手が出せなかった。
則保たちは開門を要求するも、門は開かず、挙句の果てに矢が飛んでくる。
よそへ逃げ出す則保たち。追おうとする臣下を止める鷲津。三木が国丸に矢を放ったことで、このまま居座るつもりなのだろうと考え、当面の敵を三木に定める。
北の館から都筑の亡骸を蜘蛛巣城に運んできた鷲津は開門を要求する。すると門が開き、そこには三木が待っていた。
三木は臣下の小田倉が謀反人だと思い、矢を放ったのだった。
三木は老婆の予言通り、鷲津に蜘蛛巣城を任せることにする。
跡継ぎができない鷲津は三木の息子・義照を養子に迎えようとする。しかし直前になって浅芽から懐妊したと聞かされた鷲津は三木親子を殺すことを決める。臣下に三木を殺させるも義照には逃げられる。
鷲津は失敗したことに怒り、その臣下を殺す。
結局、浅芽の子は死産となり、小田倉則保と三木義照は手を組んで一の砦と北の館を攻め落とす。そしてその軍勢は蜘蛛巣城にも迫ってきていた。
不安になった鷲津は老婆に会いに森へ行く。そこで会った老婆に「この森が蜘蛛巣城へ押し寄せぬ限り、貴方様がいくさに負けることはない」と言われ、「そんなことがあるわけがない」として勝利を確信する鷲津。
さらに鷲津は兵士たちに老婆と会ったことを話し、「あの森が動くと思うか!」と高らかに言い放ち、士気を高める。
そして小田倉則保、都筑国丸、三木義照の連合軍が蜘蛛巣城から少し離れたところまで接近し、そこで止まる。
その夜、無数の鳥は城内に入ってくる。不吉に思う臣下たち。翌日には浅芽が発狂し、さらに兵士たちが騒ぎ始める。「森が動いている!」と・・・
鷲津が天守閣からみた光景は、確かに森が動き、城に迫ってきていた。(則保たちがそれぞれ木の枝を持ってのカモフラージュ)
鷲津についていけば負けると思った臣下と兵士たちは裏切り、鷲津に無数の矢を放つ。
鷲津は多数の矢に刺されながら絶命していく。
#私が一番好きな白黒映画 黒澤明の『蜘蛛巣城』。鷲津浅茅(山田五十鈴)が狂気にとりつかれたシーンでは能楽の、白目を金泥で塗った「泥眼」の能面、死霊に変貌した顔がモノクロ画面のおくそこに、封じこめられている。 pic.twitter.com/cwXUkqXvdV
— ♗鏡谷(メフィ) (@GD_IlPiacere) April 16, 2018
「蜘蛛巣城」感想
浅芽演じる山田五十鈴さんの演技は素晴らしいというか、おぞましいというか(いい意味で!)強烈な印象を残しました。
浅芽が発狂するシーンは黒澤監督が大変満足したそうで、「このカットほど満足したカットはない」と言わせるほどの迫真の演技だったそうです。
手洗いといえば黒澤明監督の映画「蜘蛛巣城」(1957)。手についた血が落ちないと、タライの中で何度も手を洗う山田五十鈴の狂った演技が強烈。人を殺して返り血を浴びた時はすぐに洗い落としましょう。他人の血ってなかなか落ちないんですよホントに。 pic.twitter.com/XRHQfiP0yf
— kin_me (@kin_me) October 14, 2020
最後に無数の矢が放たれるシーンですが、かなり迫力があります。ものすごい近くに刺さっているので、「編集だろう」とも思いましたがそうではないようです。
三船演ずる武時が次々と矢を射かけられるラストシーンは、編集によるトリックではなく、学生弓道部の部員が実際に三船や三船の周囲めがけて矢を射た(ただし、筒状の矢にワイヤーを通し、着点に誘導したもの。また、三船から離れた位置に矢を射て、遠距離から超望遠レンズで撮影することで生じる圧縮効果により近くに刺さっているように見せた)。
撮影が終了した後、三船は黒澤に「俺を殺す気か!?」と怒鳴ったとのことである。その後も、自宅で酒を飲んでいるとそのシーンのことを思い出し、あまりにも危険な撮影をさせた黒澤に、だんだんと腹が立ってきたようで、酒に酔った勢いで散弾銃を持って黒澤の自宅に押しかけ、自宅前で「こら〜!出て来い!」と叫んだという。
石坂浩二の話によると、このエピソードは東宝で伝説として語り継がれている。
また、このシーンに関して、橋本忍によると、弓を射るのが師範クラスではなく学生だったので、三船は本気で恐怖を感じていたという。そのため、撮影の前日は眠ることも出来ないほどだった。それもあって、三船の酒の量が超えたときに、刀を持って黒澤が泊まる旅館の周りを、「黒澤さんのバカ」と怒鳴りながら回ったという。黒澤自身は三船を怖がって部屋に籠っていたと語っている。そんな三船は頻繁に「黒澤の野郎、あいつバズーカ砲でぶっ殺してやる!」ともらしていたという。
引用:Wikipedia
『蜘蛛巣城』の有名なシーン。編集によるトリックではなく、学生弓道部の部員が実際に矢を射た。
三船は黒澤に「オレを殺す気か!」と怒鳴り、酒に酔った勢いで散弾銃を持って黒澤の自宅に押しかけたことで知られています。#黒澤明#三船敏郎#東宝#昭和32年 pic.twitter.com/Gsx6CtAL4K— 冬季限定かき氷cheer920701 (@_30776506271) January 25, 2018
でもなんだかんだ文句を言いながらも、その後も黒澤明監督の作品に出続けました。
大変おもしろかったのですが、セリフは早すぎてうまく聞き取れなかったところが多く、その部分では不評だったようです。